子どもたちに「好き」の原体験を、アフタースクールcommon代表空田氏へインタビュー!

大学卒業後、キーエンスやリクルートでの社会人経験を経て、家業の不動産会社 を継いだ空田真之代表。もともと教育への関心が高く、「楽しい大人」をコンセプトに、「人を育てる場」を考えるべく社内にLiC(Learning in Context)事業部を作り、保育園の空間デザインを手がけたり、立命館大学や に立命館宇治高校、立命館宇治高校、福岡雙葉高校などでさまざまな探究学習に携わるようになりました。そうした経験をもとに、アフタースクールcommonを設立。空田さんに、学童を始めた経緯や教育に対する考え方、commonの特徴や目指すもの、子どもたちへの思いなどをお聞きしました。


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原体験の大切さを知るからこその、オリジナルプログラム

――空間デザインの会社から、なぜ教育に関わろうと思われたんですか?

本業は不動産で、不動産と教育をどうにか繋げられないかとずっと考えていました。もともと親が教員というのが大きくて、自分でも大学2年生まで教職をとっていましたが、一度は普通の会社に就職しました。ただ、そこでも人材教育などを担当していて、やっぱり教育がやりたいという気持ちは変わらなかったので、今の会社に入って既存事業が落ち着いてきたので、、ずっとやりたかった教育事業を始めました。
僕は子どもが2人いますが、ちょうど娘が小学校に入る頃で、娘の年齢に合わせて事業を作っていくことを意識しならが仕事をしているので、学童をやろうと思いました(笑)。それまで高校や大学で探究学習のプロジェクトに関わっている中で、学びに向かう素地を育む原体験が大切だと感じていました。子どもたちに「好き」の原体験をたくさんしてもらいたいという思いから、commonではオリジナルの探究学習プログラムを作っています。

――高校生や大学生と子どもたちとでは、プログラムもまた違うと思いますが。

「子どもの”好き”の原体験を作る」が、プログラムのコンセプトです。学期ごとに1つのテーマを決め、日替わりで、例えば「国際」「文化」「サイエンス」「キャリア」などと視点を変えて取り組んでいます。学童は、毎日通う子ばかりではないので、曜日で区切るやり方にしています。それを全体で7〜8週間くらいかけて進めていきます。テーマは、例えば1学期は「お祭り」、今の2学期は「宇宙」、昨年の3学期は「防災・災害」を選びました。
小学校の授業のような教科履修型ではなく、目的があって、それに関連する知識に触れていくというのが特徴ですね。基本的なことは教えますが、外部の人をお呼びして話をしていただき、テーマに関する知見を共有しています。やっぱり、我々が話すより実際の現場の方が話されたほうが、子どもたちもテンションが上がりますね(笑)。
例えば、「防災・災害」のテーマの時は、消防署の方に来ていただいたり、導入としてフィールドワークをして、近くの公園を「防災」という視点から見てみたり、地域の防災マップを作ったり、サバイバルゲームをしたりしました。あとは、年1回必ずやる避難訓練をプログラムの一環として考えて、「どうやったら地震・火事・津波から逃げられるだろう?」とみんなで話し合ったり、大型のゲームを作って保護者の方に体験していただいたり…。

――かなり大がかりですね!

そうですね。こうやってアウトプットすることで、保護者の方にとっても、子どもたちとの会話に繋がると思います。保育園の頃は、毎日お迎えの時に保育士さんと話すので「うちの子、今日はどうでしたか?」という会話が生まれますが、小学校って「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」だけで、親は子どもたちが何をしているかわからなくて、会話の質が下がっていくことがあるんですよね。
そういう時、こういう発表などがあれば、子どもたちが普段何を学んでいるのかとか、こういう興味があるんだと知ることができます。この場は、アウトプットを評価する場ではなく、見に来た人たちも子どもたちの学びを一緒に作る場と考えています。そのため、質問やメッセージを同じ目線でしてもらえたらと思います。

――子どもたちに自分で考えてもらうことが大事になりますか?

そうですね。もちろんゼロから自分で考えることはできないので、ある程度こちらで用意する必要はあると思います。結構面白かったのは、子どもたちに自然災害というのはなんだろうと質問した時、「戦争」と答えた子がいたんです。今っぽいというのか、新しいというのかわかりませんが、戦争を災害と捉えているんだという発見がありました。
あとは、サバイバルゲームの時に、なかったら不便なものを挙げてもらったら、食料、水、トイレのほかに「ゲーム」と言った子もいました。「遊びがないと死んじゃう」みたいな…。子どもらしい答えだなと思いました(笑)。

――(笑)。そういうプログラムを毎日されているんですね。

はい。ただ、子どもたちは週3日や週4日で通われているケースが多いですね。説明会でも、こちらから「ぜひ公設の学童と併用してください」というお話をしています。学童というと「公設か民間か」のどちらかにしようと思われるご家庭が多いのですが、公設と民間、どちらも必要だと思うんです。なので、とりあえず公設のほうにも申し込んでいただいて、例えば週3日 はこっち、残りはそっちという形にすれば、保護者の方にとっても、コミュニティや人間関係の部分でいいのではないかと思います。

――何か起きたときの逃げ場も作りつつ…?

そうですね。よく話を聞きますが、公設の学童は本当にパンク状態で、宿題の時間はあるけどあるだけ、基本的には制限も多くて、安心・安全だけはあると。あまり「学び」がないのでcommonにしますという方も多いです。公設の学童は厚生労働省の管轄で、「働く親のため」という部分が大きい。そうなると、子どもたちは二の次になってしまいます。保育園では、デンマークとかの教育が普及して「子どもは1人の人間である」という考え方に変わってきていますが、学童ではまだまだです。

――保育園でも学びが増えているのに、学童で急に受け身になってしまう?

そうなんです。保育園の場合は、保育指針と学習指導要領が一緒になったことが大きいと思うのですが、学童にはそういうものがない。「学童指導員」という資格がありますが、なくても働けますしね。

――そもそも学童は預かってもらう場所というイメージが強かったです。

これは厚生労働省のHPで見たのですが、放課後の時間って、土曜日まで入れると年間で1,400時間ぐらいあるんですよ。その時間数を考えた時、保護者の皆さんが、お子さんにその時間をどう使ってほしいと思われるか、そこも大きいと思います。

教育に限らず、多様なバックグラウンドを持つスタッフがいる強み

――お聞きしたかったのは、なぜ流山に作られたのかということです。

それに関しては、すごくプライベートな理由なのですが、ここに住んでいたからです(笑)。それで、自分の子どもを通わせようと思っていました。実際に子育てをしていて、とても住みやすい街ですし、新しい街だからこそのコミュニティを作っていこういう機運がある街なので、我々の学童のコンセプト「地域と共に子どもたちの試行錯誤を応援する」と合っていたので、作ろうと決意しました。そこからいろいろなつてを辿って、デベロッパーさんにお繋ぎ頂き、ここに学童がある価値などを提案致しました。

――ではもうこちらを建てる時から始まっているんですね。商業施設にあるのもちょっと斬新だなと思っていました。

そうですね。我々の会社の基本理念は、人が集まる場所を作り、人を育てるというものです。やっぱり人が育たなければ、当然地域も活性化しません。不動産と教育は方向性が結びつかないでしょうと仰る方も多いのですが、そんなことはないんです。地域を変えていくにはデベロッパーさんの力がすごく大きいし、最近ではエリアマネジメントの話は必ずと言っていいほど開発の現場では話題になります。ここのデベロッパーさんは東神開発株式会社ですが、母体が百貨店の高島屋さんのため、どちらかというとソフト面にしっかり力を入れていこうという姿勢が強いと聞いていました。なので、そんなデベロッパーさんと一緒にできるのは私たちにとってもとても嬉しいことです。

――室内もおしゃれですね。

そうなんです。保育園を多数手掛けている建築士の方と一緒に、子どもたちの試行錯誤の場としてはどんな場がいいのかというを喧々諤々話し合ってつくりました。コンセプトとしては「子どもたちにとっても実験場」です。色々な子どもたちの挑戦を場が受け止められる様に、可動式の扉にしたり、真っ白な床や壁を設置していなど随所に工夫をいたしました。あとは、commonで働く人にとっても、ここういう場所のほうが、例えば雑居ビルの1室とかより、少なくとも僕だったら絶対にいいと思います。また、ショッピングセンターなので、休憩室が別フロアにあるのもいいですね。

――こういう施設にあるだけで安心感もありますよね。

そうですね。働く人にとって安心感はあると思います。自分だったら毎日通うならしっかりした施設がいい。そうすると、良い人が集まってきてくれるので、サービスの質も上がっていくんですよね。

――今働かれているスタッフさんは何名いるんですか?

正社員が7名です。人事の人間も含めて。

――プログラムのことを考えると、ハードルが高そうですが、皆さんどういうスタッフさんたちなんでしょうか?

例えば、在学時期は重なっていないのですが、大学の後輩がいます。彼は大学の探究プログラムにインターンで関わっていて、その後教育畑に進んで、心理学系に強いんです。学生の頃に教育事業の立ち上げに関わったりしていて、最初は小さいところでやっていたのですが、そのうちもう少し大きな環境でやりたいと言うので、加わってもらいました。
太田は、もともと公設民営の学童で働いていたのですが、退職して、地域と共にやりたいということで入ってくれました。あとは、元学芸員の子がいたり、Webデザイナーとして独立していた子が来てくれたり…。やっぱり、普通に考えれば、教育がバックグラウンドの人だけじゃなく、いろいろな興味をもった人が入ってきてくれたほうがいいんじゃないかなと思います。人事の宮田も、もともとは10年間保育士をやっていて、留学したり、自分でいろいろなところに学びに行っていた人間なのですが、保育士研修を担当していて、産休から復帰する時に、人事をやってほしいとお願いしました。Commonがもし預かるだけの普通の学童だったら、こんなに良い人材は集まらないだろうなと思います。

地域に根付いた教室運営と、サービスの充実を

――探究のプログラムでは、先生方は子どもたちとどういう関わり方をされますか?

曜日ごとに授業(プログラム)を担当しているので、まずはプログラムの内容を考えて、当日はいわゆる前説のようなことをします。あとは、作業スタッフが1人つくという感じですね。プログラムには(完成された)教材があるわけではないので、オリジナリティがかなり問われるものにはなります。ただ、いきなりそれをやるのは難しいと思っています。
我々の会社では、学童のほかにもプログラミング教室を運営していますが、こちらは教材があるので、まずはそれを教えるという経験してもらってから、学童に来てもらうようにしています。そうすると、まず子どもたちにどう教えるのがいいのか考えて、そこからどういうプログラムを作っていくか、それをどう伝えていくかを考えていくことができます。

――1日にだいたい何人のお子さんがいるんですか?


定員60人を設けています。ようやく来年で3年目を迎えますので、ちょうどそのぐらいじゃないでしょうか。

――60人いると先生たちは大変そうですね。でも自分が子どもだったら、絶対通ってみたかったです。

ありがとうございます。娘を通わせようと思った人間が作った学童ですから! でも、結局流山から引っ越してしまったので、あんまりここにした意味がありませんでした(笑)。人数配置ですが、公設学童ですと、約40名に2名の先生配置となるので、スタッフ1人が見る子どもの人数は少ないと思います。

――今後、他の地域に増やしていく予定はありますか?

そこは正直考えていません。まずはこの教室をしっかりやることが一番です。教室数を増やしても、質が追いつかないと思います。スタッフを増やしてやったとしても、本来やりたかったことではなくなってしまうのではないかなと。

――それこそ、預かるだけの本末転倒になる? 拡大するより、ここでしっかり根付かせて育てていきたいんですね。

そうですね。来年から英語のプログラムも始める予定です。まずはここを重視して、どんどん内容を拡充させていきたいと思っています。

いろいろな大人たちの姿を見て、働く楽しさを感じてほしい

――少しプログラムの話に戻りますが、今学期のテーマは「宇宙」でしたね。

はい。宇宙ベンチャー企業の社長さんに来ていただいたり、千葉市科学館の方を呼んだりしています。来年から 国の宇宙開発期間で働く方にも来てもらいました。実は、アルバイトをしてくれていた子なんです。東京理科大学が近いので、立ち会ってくれました。あとは筑波(宇宙センター)も近いですね。

――そういう場所柄も関係しているんですね。

そうですね。あとは、「お祭り」がテーマだった時はDJの方に来てもらいました。お祭りは音楽が大事ですからね。彼もハーバード大学卒だったり、いろいろな人が来てくれます。彼とはもともと別のプロジェクトの知り合いでした。

――空田さんの人脈がすごいですね…!

多分このメンバーだからできているのが大きいですし、この流山という場所だからできていると思います。

――お話を伺っていると、たしかにそうかもしれませんね。安心と共にもっと広げていただきたいです。「楽しい大人」という(大元の)コンセプトもホームページで拝見して、面白いなと思いました。

ありがとうございます。やっぱり、外部の方をゲストで呼んでいるのも、子どもたちに「働くって楽しいんだろうな」と感じてほしいからというのがあります。「楽しいからこそやっているんだ」って。

――子どもの頃、普通は大人と接する機会ってなかったですよね。働いている人と接する機会なんて、社会科見学くらいでは?

あんまりないですよね。でも、それだとやっぱり(外部との関係が)遠いじゃないですか。今はわりと高校生から起業しなさい、みたいなことも多いですし、もちろん起業のイメージだけではありませんが、もし起業するとなると外部との接点はすごく多いですよね。だったらもう、子どものうちから外部との接点をもっていたほうがいいんじゃないかと思うところもあります。

――子どもたちのこれからが、すごく楽しみですね。

そうですよね。本当は、子どもたちが高校生ぐらいになるまでみたいんですけど。いろいろな大人の姿を見てほしいですね。ゲストの大人がどんな小学校時代を送っていたのか、みんなで聞いていけば、何かしらの参考にしてくれるんじゃないかと思います。

――子どもたちが自分を考えるきっかけにもなりますよね。すごいと思えるような大人って、自分とは違うんじゃないかと思うかもしれませんが。

ゲストの皆さんは、何かしら原体験をお持ちですね。ここでよく聞かれるのが特別な経験を持ってる人が多いのではと言われるのですが、僕は全員が何かしらの原体験を持っていて、あとは言語化の難易度の違いだと

――そうなると、子どもたちには何を与えてあげるのがベストなんでしょう。選択肢? 環境?

その答えが出ればいいんですけど…(苦笑)、こればっかりはわからないです。みんな性格が違いますし、自分のお子さんを見続けるしかないと思います。同じことをやっても、幸せと思う人もそうじゃない人も当然いますし。
だから、どんな環境でも、自分の幸せを自分で作れる力が必要なんだろうなと思います。だからこそ探究学習が必要だなと考えています。探求学習の目的は「who am I ?」の問いに答えることだと思いますし、その答えを持って社会とどう関わっていくかを探していくことだと僕は考えています。
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