【5歳児の保育】ねらいや活動内容など、保育士が押さえるべき5歳児の特徴
- 保育士お役立ち情報
- 2023/06/04
保育園やこども園に勤務する保育士は、毎年0歳児〜5歳児までのクラスを担当します。したがって、各年齢の成長・発達の様子や特徴を理解し、各年齢に合った保育を行う必要があることは言うまでもありません。
今回は、「5歳児の成長・発達の特徴や保育のねらい」です。5歳児(年長クラス)は園の中で1番上の年齢なので、園行事では中心となって活躍したり、卒園や就学に向けてたくさんのことを経験したりします。園生活最後の1年、やるべきことがたくさんあり、担任は園生活の集大成となるよう努めなくてはなりません。5歳児について詳しく解説しますので、しっかりと理解し、保育に当たってください。
尚、当然ですが子ども達は個人差があるため、すべての子ども達が当てはまるわけではありません。成長や発達の特徴については、一般的な内容を紹介しますが、保育を行うに当たっては目の前にいる一人ひとりの子ども達と向き合い、その子に応じた保育を行うことを念頭に置き、参考にしてください。
5歳児の特徴
5歳児は、年度中に6歳の誕生日を迎えます。“4歳の壁”を乗り越え、園で1番上のお兄さん、お姉さんとして大きな成長が見られる年齢です。4歳児でもさまざまなことができるようになりますが、5歳児ではさらに高度なことにもチャレンジし、小学校入学を楽しみに、意欲的に過ごす子がたくさんいます。
また、園生活にはすっかり慣れ、友だち同士や保育士との絆が深まり、コミュニケーション能力や社会性が大分身に付いている子が多いでしょう。理解力、記憶力、集中力などもしっかりと発達します。
一般的な5歳児の成長の目安は、以下の通りです。
身体・運動機能
幼児期の1年の成長は大きいので、4歳児に比べて驚くほど体力や筋力が発達する5歳児。長い距離を歩けるようになり、歩く速度も速くなります。身体能力の発達によって跳び箱、鉄棒、マット運動、ボール遊び、縄跳びなどいろいろな運動を積極的に楽しめるようになるでしょう。また、ルールを理解する力も伸び、リレー、サッカー、ドッジボールなどのルールを理解して楽しめるようにもなります。園庭や公園ではブランコ、ジャングルジム、雲梯、登り棒などの高度な遊具を使いこなせるようになる時期です。
高度な運動ができるようになることでケガをするリスクも生じますが、注意力が発達し、周りをよく見たり自分の能力を把握したりして、危険を回避する力も身に付くでしょう。
工作面では、手先や指先がより器用になり、ハサミで複雑な線を切ったり、折り紙や粘土、廃材などさまざまな材料を使い、いろいろな作り方をしたりできるようになります。
言葉・知能
5歳児になると、大人とほぼ対等な会話ができるようになります。語彙がますます豊富になり、考える力や記憶力も発達するので、なぞなぞやしりとり、連想ゲームなどの言葉遊びを楽しむこともできるでしょう。長い文章を記憶できるようになるので、詩の暗唱などを取り入れる園もあります。
また、文字に対する興味や関心が出てくる時期でもあり、ひらがなや数字を書いたり読んだりできるようになる子が出てきます。そのほか、大きさ(大小)・量(多い、少ない)・重さ(重い、軽い)・高低などの区別ができたり、誕生日や記憶したり、虫や車の種類などを豊富に覚えたりなど、大人が驚くほどの能力を発揮することも珍しくありません。
保育士の話を集中して聴けるようになり、よく理解もできるようになります。その日の予定に合わせ、ある程度の見通しを立てて行動したり、先の予定を理解し、保護者に伝えたり必要なものを自分で準備したりというようなことができるようになる子も出てくる年齢です。そして、季節、日にちや曜日、年などもほぼ理解できるので、経験した出来事などを時系列も含めてしっかりと人に伝えることもできるようになってきます。
想像力や表現力も増すことで、いろいろな形や人間、建物、風景など目に見たものや考えたことを自由に絵で表現したりできるようにもなるでしょう。
社会性・基本的生活習慣
我慢する力や協調性など社会的に必要な力が育ち、友だちと協力して物事に取り組めるようになる年齢です。思いやりの気持ちも育ち、「困っている友だちに声をかける」「できないことを教えたり手伝ったりする」「年下の友だちをかわいがる」などのことが自然にでき、喜びを感じるようになります。また、人が喜ぶことや嫌がることなどを考える力も育ち、感情をある程度コントロールできるようにもなっていくので、4歳児に比べて友だちとのトラブルはだいぶ減っていくでしょう。
基本的生活習慣では気温に応じて衣服の調節をしたり、うがいや汗の始末をしたり、言われなくても身の回りのことを自分で気づいて行うことができるようにもなるでしょう。
食事では、こぼさずに食べられるようになるだけではなく食事のマナーもしっかりと身に付き、配膳や掃除も自分でできるようになります。
5歳児の活動内容と保育士の配慮
園によって保育目標や活動内容は異なるので、各園の方針に従って保育をすることが必要ですが、5歳児は目前に迫った小学校入学を意識して毎日の園生活を送ることが大切です。5歳児の活動内容や保育士が配慮しなければならない注意点について、項目ごとに解説します。
【運動・安全面】
5歳児はできるようになる運動の種類が増え、瞬発性や反射神経などさまざまな力が育つので、ドッジボールでボールを咄嗟によけたりボールをキャッチしてすぐ投げたりなど、複雑な動きもできるようになります。子ども達の意欲と能力をさらに伸ばすために、たくさんの運動遊びにチャレンジできる環境を整えましょう。上手にできることよりも、身体で体験することが大切です。「これは難しい」と決めつけず、いろいろな運動を取り入れ、うまくできなくても子ども達が「楽しい」「もっとやりたい」と感じるような配慮が求められます。運動が得意な子はもちろん、苦手な子も前向きにチャレンジして自信をもてるような関わりを心掛けましょう。そのために安全な環境を整えることはもちろんですが、子どもたち自身が自分で注意する、友だち同士声を掛け合って気をつけるなどの意識を育てていくことも非常に重要なことです。
自分の身は自分で守ることはケガの防止だけではありません。「気温に応じて衣服を調節する」「汗をかいたら拭いたり着替えたりする」「手洗い、うがいを率先してする」など、日ごろから自分で健康管理ができるように声をかけ、習慣となるようにしましょう。
【情緒・人間関係】
小学校に行って困らないよう「自分のことは自分でする」「わからないことは自分で考えたり人に聞いたりする」「新しいことにも意欲的にチャレンジする」など、園生活のあらゆる場面で自立心や主体性をもって行動できるような関わりや、配慮、環境構成などを工夫しましょう。何か活動に取り組む際に、保育士が全て考え、お膳立てを整えて行うのではなく、子ども達から意見を聞き話し合ったり準備や片付けを子ども達と一緒に行ったり、子ども達の力で物事を成し遂げ、大きな達成感が得られるよう配慮することが大切です。
“4歳の壁”を乗り越えて、友だち同士仲良く遊び、協力や助け合いができるようになる5歳児ですが、意見の食い違いなどから友だち同士のトラブルが起こります。その際、保育士がすぐに仲立ちに入るのではなく、様子を見守りながら子どもたち自身でトラブルを解決する力を育てることも大切です。自分達でトラブルを解決し、乗り越えることで人との関わりを学ぶとともに、友だち同士の絆が深まる貴重な体験となることでしょう。
また、賢くなったが故に保育士が見ていないところで意地悪なことをしたり言ったりする子もいます。安易に善悪で判断、叱って解決するのではなく、意地悪をされた子、した子両方の気持ちに配慮し、慎重に対処しましょう。当事者以外の子ども達も含め、相手の気持ちを考えたり善悪について考えたりする貴重な機会となるよう、丁寧に関わっていく姿勢をもつことも必要です。
生活面では、先の見通しをもち、時間を意識して行動できるよう1日の予定を伝えたり、あらかじめ片付けや終了時間を知らせたりするなど、時間の区切りを意識できるように配慮しましょう。
【5歳児】保育のねらい
5歳児の指導計画のねらいは、上記した5歳児の特徴や活動内容、保育士の配慮を踏まえ、今後の成長につなげることが大切です。さまざまな活動に取り組む5歳児ですが、意欲と自信をもって卒園して小学校に進めるような援助や配慮を大切にしてください。
5歳児のねらいの例とポイント
・自分達でルールを決めて、鬼ごっこやドッジボール、サッカーなどの集団遊びを楽しむ。
集団遊びを行う際は保育士が先頭に立って行わず、ルールを決めたりトラブルを解決したり、全て子どもたち自身が行うように見守りましょう。どうしても子ども達だけで解決できなかったときだけ、保育士の援助が必要です。
・給食の配膳や掃除、布団敷きなど生活のあらゆる場面で、自分達でできることに意欲的に取り組む。
自分のことを自分ですることはもちろん、友だちや年齢が下のクラスの手伝いなどを積極的にできる環境を整えましょう。あらゆる生活能力を身につけるだけではなく、人の役に立つ喜びを実感できるようになります。
・文字や数字を読んだり書いたりしてみる。
文字や数字は園では必須ではありませんが、小学校入学に向けて子ども達が興味をもてるよう工夫し、書いたり読んだりする経験を取り入れてもよいでしょう。学校ではないので教え込む必要はありませんが、子ども達が体験する中で読み方や書き方、書き順などの基本を伝えていくと、後々子どもの役に立ちます。
・人前で自分の思いや考えを話す。
話す内容を自分で考え、人前で話す経験も大切なことです。中には堂々と話せる子もいれば、恥ずかしくて話せない子、話す内容が考えられない子もいるでしょう。自信をなくすことなく、無理なく取り組めるよう1人ひとりに応じて適切な配慮や援助を心掛けましょう。
まとめ
5歳児の発達の特徴や保育士の配慮、ねらいなどについて解説しました。低年齢のクラスは保育士の援助が不可欠ですが、5歳児は援助を必要最小限にとどめ、保育士中心ではなく子ども達中心で活動を進めていけるような関わりが必要です。
また、5歳児の活動内容は園によってさまざまですが、日常の園生活のあらゆる場面で、子ども達の自主性や主体性を育むことを忘れずに保育しましょう。
紹介した活動内容やねらいはほんの1部ですので、実際の子ども達の成長の様子や興味・関心に応じて指導計画を立て、環境を整えながら、園生活の締めくくりとなる5歳児の1年が子ども達はもちろん、保育士自身にとっても充実した毎日になり、卒園の日が迎えられるようなることを願っています。
ライタープロフィール
西須 洋文さん
30年以上、保育士として保育園やこども園に勤務。現在はWebライター、リトミックや親子遊びの講師などとして活動中。
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