【4歳児の保育】ねらいや活動内容など、保育士が押さえるべき4歳児の特徴
- 保育士お役立ち情報
- 2023/06/03
保育園やこども園に勤務する保育士は、毎年0歳児〜5歳児までのクラスを担当しますので、各年齢の成長・発達の様子や特徴を理解し、各年齢に合った保育を行わなければなりません。
今回のテーマは、「4歳児の成長・発達の特徴や保育のねらい」です。昔に比べて保育園に入園する年齢が低年齢化し、3歳未満児から入園する子どもが多くなっている現在。0歳児から入園した子にとっては、4歳児になると園生活がすでに5〜6年目となり、すっかり慣れています。年少クラスの3歳児から入園した子ども達も園生活は2年目を迎え、園生活の楽しさを知って生き生きと過ごしていることでしょう。そんな4歳児について、詳しく解説します。
尚、当然ですが子ども達は個人差があるため、すべての子ども達が当てはまるわけではありません。成長や発達の特徴については、一般的な内容を紹介しますが、保育を行うに当たっては目の前にいる一人ひとりの子ども達と向き合い、その子に応じた保育を行うことを念頭に置き、参考にしてください。
4歳児の特徴
年度中に5歳の誕生日を迎える4歳児は年中クラスです。3歳児(年少クラス)のかわいらしさが少しずつ薄れ、5歳児(年長クラス)のしっかりとしたお兄さん、お姉さんらしい姿に徐々に変わっていく年齢。身体機能や知能、精神的にも発達し、複雑な動きや難しい課題も意欲的に挑戦する姿が多く見られるようになります。
そして、4歳児は園の中で5歳児に次いで2番目に大きい年齢なので成長が感じられ、頼りになる面が多く見られます。一方、“4歳の壁”という言葉があるように、4歳児は3歳児以上に自我が発達し、いろいろなことが理解できるようになってくるため低年齢の頃とはまた一味違った感情の揺れが見られ、友だち同士のトラブルが起こりやすい年齢でもあるのです。
一般的な4歳児の成長の目安は、以下の通りです。
身体・運動機能
3歳児で運動機能とともに脳機能も発達し、「平均台をスムーズに渡る」「台の上に上ってジャンプする」「鉄棒にぶら下がる」「片足立ちをする」「片足で立ったり跳んだりする」などの運動遊びができるようになりますが、4歳児では「ケンケンパー」「スキップ」など、さらに複雑な運動もできるようになります。ボールの扱いも上手になり、投げるだけではなくキャッチできるようになったり、上手にサッカーをしたりできるようにもなるでしょう。また、「走りながらボールを蹴る」など、異なる2つの動きも段々とできるようになっていく年齢です。
手先や指先の機能も発達し、3歳児では自分で身支度をした後に「保育士が襟を直す」「シャツの裾を入れる」などの仕上げを手伝う場面もありますが、4歳児ではほとんど自分で整えられるようになるでしょう。工作では、ハサミでカーブや複雑な線を切ったり、少し高度な折り紙を折ったりすることもできるようになります。
言葉・知能
4歳児は、自分の思ったことをほぼ全て言葉にして伝えることができるようになります。もちろんまだわからない言葉もたくさんありますが、新しい言葉をどんどん吸収したり、わからないことを質問したりできるようになる時期でもあるでしょう。
知能も発達し、相手の気持ちや状況を考える力も少しずつ芽生え、言ってはいけないことを考えられるようになる子もいます。また、朝昼晩や現在・過去・未来などの時系列や、曜日・月・年などの認識もできるようになります。
社会性・基本的生活習慣
4歳児は精神的にも大きな成長が見られ、自制心が発達して少しずつ我慢ができるようになったり、自意識の芽生えにより自分と他人をしっかりと区別できるようになったりします。知能の発達により相手の気持ちや状況が考えられるようになると先述しましたが、思いやりの気持ちも育ち、泣いている友だちを心配したり困っている子を助けたりできるようにもなるでしょう。その反面、賢くなった分だけ自分の都合が悪いことは隠したり嘘をついてごまかしたりすることができるようにもなる時期です。3歳児の無邪気な友だち関係とは少し変わり、友だちの存在がより大きくなるとともに、保育士の目が届かないところで友だち関係のトラブルが発生することが増えるでしょう。
自分のことは一通りできるようになり、基本的生活習慣はほぼ自立。自分から進んで日常の挨拶ができるようにもなり、「ありがとう」「ごめんなさい」など、状況に合わせて自分から言えるようにもなります。
“4歳の壁”とは
“4歳の壁”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。“4歳の壁”とは、大脳の発達に伴い認知機能が成長することで訪れる自身の変化に戸惑い、不安定になる現象のことを言います。
したがって、4歳児は心身の成長に反して、低年齢の頃に戻ってしまったような幼い行動をとってしまう様子が見られることがあるのです。園生活においても、4歳児の不安定な様子に手を焼いてしまう場面があるかもしれませんが、成長の過程の一時期のことなので、他の保育士や保護者との協力や連携を図りながら、温かく見守っていきましょう。
4歳児の活動内容と保育士の配慮
4歳児の活動内容は3歳児の活動から発展し、5歳児の活動に向けて幅が広がっていきます。4歳児は園生活が残り2年となり、2年後には小学校に入学するということを意識しましょう。ただし、活動内容を難しく捉えたりついていくのが困難だったりする子もいます。無理なく進めていけるよう1人ひとりの様子を見ながら、配慮していくことも大切です。
次に4歳児の特徴を踏まえ、4歳児ならではの活動内容や保育士が配慮しなければならない注意点について解説します。
【運動・安全面】
4歳児は跳び箱、マット運動、鉄棒、サッカーなどさまざまな運動を楽しめるようになります。身体機能が向上し、注意力も身についていきますが、運動能力や注意力には個人差があります。また、運動が得意な子ほど自信過剰になるがゆえにケガをしてしまうケースもあるでしょう。鬼ごっこなどでは足が速くなった分だけ、衝突や転倒が起こった場合に骨折や歯が折れるなど大きな事故につながる可能性も高くなります。保育士は子ども達全体の状況を注意して見守ることはもちろんですが、子どもたち自身にも注意して遊ぶよう言葉をかけていくことが必要です。
そして、運動能力に自信がもてない子どもには、段階を踏んで少しずつできるように配慮し、運動することの楽しさを味わえるような配慮をしましょう。鉄棒や跳び箱などの運動では恐怖心から苦手意識をもつ子も多いので、恐怖心を克服できるような援助を心掛けることも大切です。
【情緒・人間関係】
前述したように、4歳児は友だち関係が難しくなる時期です。いろいろな面が大きく成長しますが、成長に反して“4歳の壁”にぶち当たり不安定になったり、友だちとの人間関係がうまくいかず登園を渋ったりするようになる子も出てきます。中には何かトラブルがあっても友だちの目が気になって保育士に言えず、家に帰って保護者に話し、保護者から話があって保育士がトラブルに初めて気付くというケースも出てくるでしょう。そのようなケースは保護者に不安を与え、園や担任に対する不信感にもつながります。また、子ども達1人ひとりの思いや言い分を聞かず、行為の善悪だけで一方的に解決しようとすると、子ども達の心が深く傷つき、後が長引いてしまうケースもあるのです。
自分のことは自分でできるようになり、友だちとも仲良く遊べるようになるのでつい安心や過信しがちですが、繊細な年齢であるということを忘れず、子ども達の心に寄り添いながら保育に当たりましょう。
【4歳児】保育のねらい
4歳児の指導計画のねらいは、上記した4歳児の特徴や活動内容、保育士の配慮を踏まえ、今後の成長につながるねらいを立て、活動内容を考えましょう。
4歳児のねらいの例とポイント
・友だちや保育者と一緒にさまざまな遊びや活動に取り組み、一緒に活動することの喜びや楽しさを感じる。
人間関係が難しくなる時期だからこそ、人と一緒に活動することを経験し、ときにはぶつかりながらも友だち同士協力し合ったり思いやったりできるよう援助し、絆を深めていけるような活動内容や保育士の関わりをもちましょう。
・日々の生活や当番活動などを通し、自分でできることを増やし、自信をもつ。
基本的生活習慣はほぼ自立し、自分のことは一通り自分でできるようになりますが、さらに「身支度を自分できちんと整える」「道具箱をきれいに片付ける」など、きちんとできることを意識し、子ども達の身につくように工夫しましょう。また、当番活動では食器の配膳、掃除などできることを少しずつ加え、「なんでもやってみたい」「できるようになって嬉しい」という気持ちを育て、自身がもてるような活動を取り入れていくことが大切です。
・文字や数字に興味や関心をもつ。
自分の名前や絵本の文字、時計の数字など身近な環境の中で文字や数字に興味や関心をもてるような関わりを工夫し、子ども達自身が自然と興味や関心をもてるような環境構成や関わりを意識しましょう。
・さまざまな表現活動を楽しみ、自分の思いをのびのびと表現しようとする。
表現活動には絵画、工作、歌、楽器、ダンスなどいろいろありますが、自分の得意なものを見つけ、思うようにのびのびと表現できるように配慮しましょう。また、苦手なことでも自信をなくすことなく、表現することの楽しさを味わえるような援助を心掛けることが大切です。
まとめ
4歳児の発達の特徴や保育士の配慮、ねらいなどについて解説しました。4歳児は園で2番目に大きい年齢となり、自信をもって園生活を楽しめる年齢です。しかし、成長の中でいろいろな葛藤を抱え始める時期でもあります。集団での活動が多くなりますが、1人ひとりに寄り添い、楽しく生き生きと園生活を過ごせるよう配慮していきましょう。
紹介した活動内容やねらいはほんの1部ですので、実際の子ども達の成長の様子や興味・関心に応じて指導計画を立て、環境を整えながら、4歳児の1年が子ども達はもちろん、保育士自身にとっても充実した毎日になるよう保育に取り組めることを願っています。
ライタープロフィール
西須 洋文さん
30年以上、保育士として保育園やこども園に勤務。現在はWebライター、リトミックや親子遊びの講師などとして活動中。
\このページをシェアする/