【1歳児の保育】ねらいや活動内容など、保育士が押さえるべき1歳児の特徴

保育園やこども園には、0歳児から5歳児までの子ども達が通います。大人になると5つの年齢差はそれほど大きくありませんが、乳幼児にとっての5歳差は、成長・発達の部分で非常に大きな違いがあります。人間の生涯の中で、最も変化が大きい時期と言っても過言ではありません。保育士は毎年さまざまな年齢のクラスを担当しますので、各年齢の成長・発達の様子や特徴を理解し、各年齢に合った保育を行う必要があります。


今回の記事では、1歳児の成長・発達の特徴や保育のねらいなどについて解説します。尚、当然ですが子ども達は個人差があるため、成長や発達の特徴について一般的な内容を紹介します。保育に当たっては、目の前にいる一人ひとりの子ども達と向き合い、その子に応じた保育を行うことを念頭に置いて、参考にしてください。

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1歳児の特徴

1歳児の子ども達は、1年の間に2歳の誕生日を迎えます。0〜5歳児の中でも、特に3歳未満児は1年の成長が非常に大きいですが、その中でも1歳児は立てるようになったり歩けるようになったり、発語から簡単な会話ができるようになるなど、0歳児の赤ちゃんの頃に比べると格段にできることが増えます。4月生まれの子と3月生まれの子では発達に大きな差があるため、同じクラスの中にまだハイハイやつかまり立ちをする子と、スタスタ歩けるようになった子が混在しているでしょう。

1歳児の成長の目安は、以下の通りです。

身体

生活の大半を寝て過ごしていた0歳の頃に比べると、身体機能や足腰の力が大きく発達します。歩き始めは個人差がありますが、1歳前後が歩き始める目安です。足腰の発達とともに“つかまり立ち”から“つたい歩き”と段階を踏んで、少しずつ自力で歩けるようになっていきます。走ったり階段の昇り降りをしたりなどスムーズに動けるようになります。1歳後半には、しゃがんだり立ったりする全身運動や、低い段差に乗ったり飛び降りたりすることもできるようになるでしょう。腕の力も付き、ある程度の重さのものを持ち上げて運ぶこともできるようになっていきます。

言葉

「ウー」「アー」など、まだ言葉にならない喃語(なんご)が聞かれるようになり、そこから少しずつ「ママ」「パパ」「ブーブー」などの単語や擬音語を話し始めます。そして、言葉を発するだけではなく、大人が話すことを理解できるようにもなってくるのもこの時期です。保育士が言うことをよく聴こうとしたり、話す内容を理解してうなずくなどの反応が見られるようにもなるでしょう。

1歳後半は話せる言葉の数が増え、「ママだっこ」「ワンワンいた」などの2語文で話すことができるようになっていく時期です。理解力も増し、徐々に会話ができるようになり、保育士が言ったことを理解して行動することが少しずつできるようにもなります。自分の名前を認識し、呼ばれたら反応したり、名前を言おうとしたりするようにもなるでしょう。

心理

歩いたり運動したりすることができることで、行動範囲が俄然広がります。必然的にそれまでとは目に入る景色が変わるため、周りのありとあらゆるものに興味を示し、好奇心が旺盛になるでしょう。人にも興味を示し、保育士や友達など一緒に園生活を過ごす周囲の人達とのコミュニケーションも活発になります。同時に自我の芽生えも進み、好きなことを積極的にやろうとしたり、やりたくないことを態度で示したりするなど、自己主張をするようになる時期です。やりたいこと、行きたい場所、食べたいもの、嫌なことなどがはっきりし、それを動作や表情、言葉で激しく主張するようになります。そして、ますます好奇心旺盛になり、行動範囲も広がるでしょう。

食事

離乳食の後期〜完了期を経て、幼児食に移行して1日3回食べるようになってくる時期です。柔らかい離乳食から、大人と同じものを食べるようになる時期と並行し、前歯が生えそろったり奥歯も生えてきたりすることで、物をよく噛んで食べることができるようにもなってきます。

幼児食になり、ほとんどのものが食べられるようになると同時に、食べ物の好き嫌いも出てくるでしょう。食べさせてもらうことが少なくなり、1人で食べられるようになることで、遊び食べをしたり好きなものだけ食べたりして、食事に時間がかかる子が多くいます。

安全面に要注意!

1歳の特徴を解説しましたが、1歳児クラスは4月生まれの子は年度の初めに2歳になり、年度末には3歳の誕生日が近づく時期です。反対に、3月生まれの子は1歳になったばかりで進級し、年度末にようやく2歳になります。したがって、クラスの中にさらに成長・発達している子も一緒に過ごすということです。したがって、より個人差に応じた働きかけや援助が求められるのは言うまでもありません。

また、行動範囲や好奇心が広がる分危険な場面も多くなり、ますます目が離せなくなるでしょう。転倒、衝突、落下、飛び出し、誤飲などは決して起こらないよう注意が必要です。そして、自我の発達とともに子ども同士のけんかやトラブルも頻繁に起こるようになります。けんかやトラブルを通して学ぶことも多いですが、言葉でうまく話せないため、ひっかきや嚙みつきなども起こりやすくなるため、十分に注意しましょう。

1歳児活動内容と保育士の配慮

1歳児の特徴について解説した通り、1歳児クラスの進級直後は1歳になったばかりの子どもと、もうすぐ2歳になる子どもが一緒に過ごします。1〜2歳の1年間の成長のスピードは目覚ましいので、4月生まれと3月生まれの差はとても大きいです。歩ける子と歩けない子、離乳食の子と幼児食の子。離乳食の子の中にも後期、完了期など分かれているため、個別の配慮が非常に大切。したがって、集団での活動よりも個人の成長に合わせた環境設定や援助が不可欠です。

環境構成

つかまり立ち〜つたい歩きと段階を踏みながら歩行へと移行していく時期の1歳児は、一生懸命立とうとしたり歩こうとしたり、個々の段階に応じてトライを繰り返します。また、スタスタ歩ける子とつかまり立ちをしている子が同じ保育室で過ごすなどということもあるでしょう。安全面を最優先すべきなのは言うまでもありません。「危険がないよう物をできるだけ片付けて広い環境を作る」「コーナーを設定するロッカーの角などに弛緩剤を貼る」「死角をなくす」「転んでもケガをしにくいようにマットを敷く」など、施設に応じた安全な環境設定を行いましょう。

遊び

1人ひとりの子ども達が、自分の興味を持った遊びに没頭できるよう、積み木、人形、絵本、ままごとセットなどさまざまな遊具を自由に取り出して遊べるような保育室の環境づくりが望ましいでしょう。徐々に手先や指先を使った作業もできるようになってくるため、簡単なブロックやシール、自由にお絵かきが楽しめる紙やクレヨンなども用意しましょう。

その際、手に持っているものを口に入れる、遊具を持って走って転倒するなどの事故や、子ども同士でおもちゃの取り合いをして怪我をさせるなどのトラブルが起こらないようにしましょう。仲良く遊んでいると思って油断した一瞬のすきにケンカになり、傷つけてしまうこともあります。
園内で、未然に事故を防ぐためのシミュレーションや研修、保育士同士の役割分担などをきちんと決めることが大切です。

遊戯室や園庭など広い場所で遊ぶ時間には、身体機能の発達を促すねらいでたくさん走ったり簡単なボール遊びをしたり、身体を動かす活動を取り入れましょう。晴れた日は外遊びや散歩に出掛け、たくさん歩く経験や砂遊び、自然環境に触れる経験を積むことも意識しましょう。

生活習慣

自分でできることが少しずつ増えると同時に、自分でできる喜びや好奇心が増し、「やりたい」という気持ちがどんどん芽生える時期です。簡単な衣服の着脱、靴の脱ぎ履き、食事、トイレトレーニングなどの場面で「やりたい」という気持ちを大切にしましょう。

たとえば、ズボンを穿く場面では「穿きやすいようにズボンを足元に置く」「穿き終わったらたくさん褒める」「シャツの裾を入れて仕上げを手伝う」など。

また、自分でやろうとしない子には、励ましながら少しずつできることを増やすような配慮も必要です。保育士がやってあげたほうが楽なこともたくさんありますが、指導の一環として意識することが大切。時間に余裕がないと子どもが自分でやっていることを待ってあげることができません。時間の余裕を持ち、待ってあげられる生活リズムを工夫しましょう。

言葉

言葉が増え、保育士の話す内容を理解することもできるようになっていく時期のため、子ども達との会話を楽しみましょう。何を言っているのか聴き取れなかったり意味が分からなかったりすることもありますが、よく耳を傾けて気持ちを受けとめるように心掛けることが大切です。

保育士との会話をたくさん楽しむことで話すことに自信をもち、楽しいと感じるようになるでしょう。また、子どもに何かを伝えるときにはわかりやすい表現やテンポに気をつけましょう。そして、子ども達の手本となるよう、きちんとした言葉遣いで話すことも意識してください。

心理

自我が芽生え、いわゆる“イヤイヤ期”に入るのも1歳児の特徴です。危険なこと以外は子どもの気持ちを受けとめ、根気良く見守る姿勢を意識しましょう。子ども同士のトラブルも増えていきますが、トラブルを通して学ぶことはたくさんあります。手や口が出て相手にケガをさせるようなことがあると、まずその行為を叱ってしまいがちです。もちろん、やってはいけないことだと伝えなくてはなりませんが、まずはそこに至った気持ちを理解し、落ち着かせることを優先しましょう。子どもの気持ちを理解し、共感し、代弁することで子どもの気持ちは徐々に落ち着いてきます。そして、行為を叱った後は温かいスキンシップなどを心掛け、フォローすることも大切です。

【1歳児】保育のねらい

1歳児の指導計画のねらいを立てるときは、上記した1歳児の特徴や活動内容、保育士の配慮を踏まえた内容にしましょう。前述したように月齢や個人差による発達の違いが大きい年齢なので、1人ひとりの発達に応じたねらいや活動計画になるよう工夫すると同時に、少しずつ集団活動もできるようになっていく年齢でもあるので、集団で行う活動や生活のルールを理解し、身につけていけるように配慮しましょう。


・安全な環境で、好きな遊びをのびのびと楽しむ。
・保育者との信頼関係を築き、情緒が安定する。
・友だちとの関わりの中で、一緒に遊ぶ楽しさを感じる。
・「自分でやってみよう」という気持ちをもち、意欲的に行動する。
・さまざまな経験を通して、身近な人やものへの興味や関心が広がる。

まとめ

1歳児について、発達の特徴や保育士の配慮、ねらいなどについて解説しました。あくまでも一般的な目安ですので、目の前の子ども達と向き合い、子ども達の発達において大切なことは何かを考えましょう。そのうえで指導計画を立てたり環境構成を考えたり、日々の保育の中で子ども達に対して最適な配慮や援助を心掛けてください。また、保育は1人で行うものではありません。保育士同士で話し合って共通認識をもつこと、協力し合って保育することが大切です。

ライタープロフィール

西須 洋文さん
30年以上、保育士として保育園やこども園に勤務。現在はWebライター、リトミックや親子遊びの講師などとして活動中。

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