保育士の仕事【保育日誌の書き方】
- 保育士お役立ち情報
- 2023/04/24
保育士の仕事には、『指導計画』や『経過記録』などさまざまな書類の作成があります。中でも日々の保育の計画やその日の記録をつける『保育日誌』は重要な書類の1つ。その日の活動の記録や子ども達の様子、「ねらいを達成することはできたか」などの評価・反省を毎日しっかりと記録することが、翌月の『指導計画』や個別の『経過記録』などの書類作成に向けても役立つのです。
今回の記事では、『保育日誌』の書き方について解説します。すでに書き慣れている人は、現在の自分の記録の振り返りに役立ててください。まだ『保育日誌』の作成を難しく感じている人や、記録したことがなかったり書き慣れていなかったりする新人の皆さんは、今後に向けてよく読んで理解しておきましょう。
『保育日誌』とは
『保育日誌』は、クラスごとに毎日記録する日誌です。その日の活動内容はもちろん、保育士の配慮や援助、子ども達の様子、評価・反省などを記録します。
『保育日誌』の目的は、日々の記録を残すことでその日の保育を振り返り、次の計画を立てる際の参考にしたりその後の保育に活かしたりすることです。毎日記録することで1日の保育の評価や反省をし、その都度改善して保育の質を向上させていくことができるでしょう。そして、『保育日誌』をきちんと記録しておけば、『月間指導計画(月案)』や『週案』において計画を立てる際にも非常に役立ちます。また、『個人経過記録』や『保育所児童保育要録(認定こども園園児指導要録)』を作成する際にも有効。そのため、数多い書類の中でも非常に大切な書類です。
『保育日誌』の内容
『保育日誌』の様式は園や市町村によって異なり、0歳児、1〜2歳児、3〜5歳児など年齢によって異なる場合もあります。基本的な内容や項目には、以下のものがあるでしょう。
日付・天気
日付はもちろんですが、その日の天気や気温、湿度なども記録します。
園児数(在籍数・出席数/欠席数)
クラスに在籍している園児数と、その日の出席と欠席の人数を記入します。
ねらい
その日1日のクラスの保育のねらいを記入します。ねらいは、あらかじめ月案や週案で立ててありますが、日々の保育を記録することでねらいや配慮が変わってくることもあるでしょう。その日の活動内容にも即したねらいを立てましょう。
その日の予定
クラスで活動する内容や行事がある場合は行事名を記録します。
保育士の配慮
その日の活動内容に即して、保育士が配慮すべき点をあらかじめ記入しましょう。活動内容や保育指針(こども園教育・保育要領)の領域別に記入しておくことで、実際の保育において、より役立てることができます。
評価・反省
1日の保育を終え、「子ども達の様子はどうだったか」「ねらいはどの程度達成できたか」「保育士は適切な配慮ができていたか」などの視点で評価及び反省を記入します。
『保育日誌』の書き方のポイント
前述したとおり、『保育日誌』は非常に重要な書類です。『保育日誌』に限らず、園の書類はすべて必要なものです。ただ単に監査のために書いておかなければいけないものではありません。それぞれの書類の必要性をきちんと理解したうえで記録することを心掛けましょう。
『保育日誌』はできるだけ詳しく記録できれば、その後に役立ちますが、毎日記録をしなければならないので効率化を図ることも重要です。
毎日記録する
『保育日誌』は毎日記録する書類なので、記録を怠ってしまうと活用することができません。その日の勤務状況(シフトなど)や行事の予定などによって記録できない日があるかもしれませんが、何日も溜めてしまうと後で大変な時間や労力がかかるだけではなく、正確に記録することが難しくなります。したがって、その日のうちに記録することが大切です。その日のうちに記録することが難しくても、できるだけ翌日や週をまたがずに記録するようにしましょう。
メモや箇条書きの活用
毎日記録するために、メモを取ることをおすすめします。保育をしながらメモを取ることは簡単ではありませんが、細かいこともすぐにメモを取る習慣をつけておくと、非常に役立ちます。『保育日誌』をパソコンで作成する場合は、空いた時間に箇条書きで主語や単語だけでも入力しておくとよいでしょう。
分担と助け合い
複数担任の場合は、1週間交代など分担して記入する場合が多いと思いますが、担当の人が書けなければほかの人が代わりに書くなど、担当にこだわり過ぎず臨機応変に助け合う気持ちをもちましょう。助け合う気持ちは、『保育日誌』に限らずすべての仕事に共通すること。感謝の気持ちや言葉も忘れないよう意識することも大切です。
事前にできるだけ記録しておく
内容からわかる通り、『保育日誌』は事前に記入しておくべき項目が多くあります。その日の天気や出席人数、評価・反省などは当日にならなければ書けませんが、ねらいや予定、配慮などは事前に書いておくべきものです。当日の朝までに記録しておかなければなりませんが、前日や当日に書かなくてはいけないわけではありません。まとめて書いておける項目は、時間があるときにまとめて書いておくと効率的です。その後、改善する必要が生じたら修正しましょう。
具体的に書く
特に子どもの様子などは具体的な出来事も含めて、できるだけ詳細に書いておくことでその後に役立ちます。しかし、ダラダラと長い文章にならないよう気をつけ、簡潔に読みやすい文章を書くことも大切です。
たくさん書きすぎない
具体的に書くことは大切ですが、長い文章やたくさんの内容を書けばよいというものではありません。後で読み返したときにわかりやすいためでもありますが、時間をかけず効率的に仕事を進めるうえでも大切です。記録しておくべき必要な内容だけを、簡潔に書くことを心掛けましょう。
隙間時間を活用する
保育中は子ども達が最優先です。子ども達を保育室で自由に遊ばせながら、パソコンや書類に向かうということは、安全の面から考えても絶対に避けなければならないことは間違いありません。しかし、同時に保育士の負担軽減や効率化も大切なことです。遅くまで残って残業しながら書くということをできるだけ避けるためにも、子ども達の登園前や午睡中などのちょっとした隙間時間を活用して、少しでも書く習慣をつけましょう。また、その日の出席人数や状況によって余裕があるときは保育士同士で声を掛け合い、1人が書類を書くなどの配慮や工夫を心掛けることもポイントです。
『保育日誌』を活用するポイント
前述したように『保育日誌』の大きな目的は、日々の保育に活かし、保育の質の向上を図ることです。より活用するために、“PDCAサイクル”の活用が有効です。
“PDCA”とは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の4つの頭文字からできた言葉。保育日誌に記録した内容を基に、この4つのサイクルを繰り返すことで保育の質の向上につながります。
Plan(計画)
『月案』や『週案』を基に、『保育日誌』にねらいや配慮、活動内容を記録しますが、この作業が「Plan(計画)」に該当します。保育目標やねらいの達成のために具体性を意識し、しっかりと計画を立てることが非常に重要なことは言うまでもありません。
DO(実行)
その日に行った保育が「Do(実行)」に当たります。『保育日誌』に記載したねらいや配慮を基に保育を展開することが重要です。計画が「絵に描いた餅」にならないよう、毎日保育の前に確認を忘れないようにしましょう。また、保育は計画通りにいかないことも多くあります。必ずしも計画通りにいくことが大切ではなく、子ども達の様子や状況に応じて臨機応変に対応することも保育士にとって大切な役割の1つです。
Check(評価)
評価・反省は保育日誌において、保育の質の向上を目指すうえで重要な項目です。「保育士は適切な配慮ができたのか」「計画通りに行ったのか」「なぜ計画通りにいかなかったのか」など、事前に立てた計画のねらいや配慮項目に基づいて適切に評価します。よくなかった点だけではなく、よかった点についてもしっかりと記録しておくことが大切です。
Action(改善)
計画〜実行〜評価を踏まえ、次に向けて具体的に改善を実行する部分です。評価・反省をして終わりではなく、しっかりと改善を実行することが最も重要です。評価・反省した部分をどうやって活かすのかを考え、次の計画に活かし、実行していかなければなりません。
以上の4つのサイクルを、『保育日誌』を活用しながら毎日繰り返すことで、保育の質は向上していくのです。ただ記録するだけに終わらず、PDCAサイクルを意識し、生きたものにしていくことが保育士の力となります。
また、クラス内だけにとどまらず、園全体で共有していくことで、園全体の保育の質はより一層向上していくでしょう。
まとめ
『保育日誌』は、日々の保育を行ううえで最も重要な書類だと言っても過言ではありません。日々の記録は大変な作業ですが、『保育日誌』の目的や活用法を理解し、毎日しっかりと記録していくことを心掛けましょう。同時に、『保育日誌』の記入が負担にならないよう、効率化や職員同士の協力体制の構築もぜひ実現させてください。
ライタープロフィール
西須 洋文さん
30年以上、保育士として保育園やこども園に勤務。現在はWebライター、リトミックや親子遊びの講師などとして活動中。
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