保育士が年度末にやっておくべきこと
- 保育士お役立ち情報
- 2024/03/18
保育園やこども園にとっての1年は、4月1日から新年度が始まり、3月31日で終わります。年末の12月は昔から“師走”と呼ばれ、「師(僧侶)も走り回るほど忙しい月」との意味があるように1年の締めくくりや新年を迎える準備で大忙しの月。年度末の3月も同じように、年度末の締めくくりと新年度の準備を同時進行で進めなければならないため非常に忙しく、保育士にとっては1年で最も忙しい時期だと言ってもよいでしょう。
今回の記事では、保育士が年度末にやっておくべきことについて解説します。今年度をしっかりと締めくくり、新年度に新たな気持ちでスタートを切ることができるようよく読んでください。
保育士が年度末にやるべき2つのこと
年度末における保育士の仕事は、大きく分けると「当年度の締めくくり」と「新年度の準備」の2つです。それぞれやることは山積みで、多岐にわたり、同時進行で行わなければならないため非常に繁忙な毎日になるでしょう。それぞれの仕事内容や、スムーズに進むためのポイントなどを解説します。
当年度の締めくくり
3月末で退職をするわけでなければ、4月に入ってから前年度分の残った仕事の処理をすることは可能です。しかし、新年度は環境が変わり、毎日が非常に慌ただしく過ぎ、子ども達も職員も慣れるまで大変。そのため、当年度のうちにできる限りの仕事を終わらせて、新年度をスムーズに迎えるようにしましょう。
引き継ぎ
持ち上がりで同じクラスの子ども達の担任をするのであれば引き継ぎは必要ありませんが、担任が交代する場合は次年度の担任に園児一人ひとりの性格や発達状況、保護者の様子等の引き継ぎをしなければなりません。基本的な情報は園児名簿や個人経過記録などの書類に記載されているので、基本情報以外に特別配慮が必要な点などがあれば、口頭や文書にてしっかりと引き継ぐ必要があります。特に、アレルギーや持病などの体調面や配慮を要する家庭の事情、対応が難しい保護者に関することなど文章に残すのはもちろん、口頭で細かいところまで引き継ぐとよいでしょう。
園によっては引き継ぎ事項を書く様式が決まっているなど引き継ぎのやり方が決まっている場合もあるので、各園のやり方にしたがって引き継ぎを行いましょう。
年度末は保護者の転勤等で別の園に転園する園児がいることもあります。その場合は転園先への引き継ぎも必要です。
書類作成
保育園やこども園には、クラスごとの保育日誌、指導計画(年間指導計画、月案、週案、日案など)や経過記録、出席簿など園児やクラスに関する書類をはじめ、行事計画や行事記録などたくさんの書類があります。その都度各書類の処理をしっかりとしておかないと、後から非常に大変です。当年度分の書類で処理が済んでいないものがあれば、年度中にきちんと終わらせておくようにしましょう。(年度末や監査前などにまとめて行うのではなく、日々きちんと書類作成を行う心掛けが有効です。)
掃除
1年間使った保育室やロッカー、靴箱など園内の環境をきれいにしましょう。保育室やロッカー、靴箱などは次のクラスに気持ちよく引き継げるようにしっかりときれいにすることが大切です。特に3歳以上児のクラスは子ども達にも新年度を迎えることを話し、感謝の気持ちをもって自分の保育室やロッカーをきれいにすることが成長において貴重な体験になります。
また、保育室の引っ越しをする際に園内や備品(机、椅子等)の破損個所の確認や修繕も行いましょう。
持ち帰るもの
年度末に当たり、1年の作品や教材など持ち帰るものが多くあります。持たせ忘れや間違いのないよう注意が必要です。また、持ち帰りの準備などに追われてしまうと慌ただしい環境になり子ども達が落ち着かなかったり、保育士の注意が持ち帰るものの準備に集中して目が行き届かなかったりして事故が起こりやすくなります。余裕をもって準備することを心掛けましょう。
年長児(卒園児)
年度末で園を卒園する年長児の担任は、他の年齢に比べて仕事が多くあります。前述した持ち帰るものも、特に間違いや持たせ忘れがないよう十分注意しましょう。
子ども達は卒園するので、園内での引き継ぎはありませんが、子ども達が入学する各小学校への引き継ぎが必要です。園から小学校へは、「児童保育要録」の送付が必要です。年度末が近くなってから取り掛かるのではなく、日々しっかりと記録を残しまとめておくようにしましょう。
園によっては卒園制作や文集、アルバム作りなど園全体で協力し合いながら心を込めて卒園児が送り出せるよう取り組むことが大切です。
卒園式
年長児を送り出す卒園式は、年長児だけの行事ではありません。1年の中でも大切な園の行事です。年長児の担任のやることは多くありますが、園全体で分担して準備しましょう。
年度末行事
卒園式のほかにも、お別れ会、お別れ遠足など園によって年度末の恒例行事が行われるでしょう。何かと慌ただしい年度末ですが、1年を締めくくる大切な行事ですので、行事の意味を踏まえて計画や準備に取り組みましょう。
挨拶
1年間共に過ごした子ども達やお世話になった保護者には、心を込めて挨拶をしましょう。
直接お会いできない保護者には連絡帳やおたより等を通じて、心のこもった文章で感謝の気持ちが伝わるよう心掛けましょう。
1年間共に頑張った職員同士の挨拶も、もちろん大切です。
退職者の見送り
年度末は卒園や転園する園児とのお別れだけではなく、各自の事情で退職する職員がいることが多い時期です。忙しい中ですが、共に働いた職員への感謝の気持ちを込めて送り出しましょう。
新年度の準備
春休みがない保育園は、3月31日に前年度が終わると、すぐ翌日から新年度を迎えます。入園式を前に、4月1日から登園する新入園児もいるでしょう。スムーズに新年度を迎えるためには新年度準備に早めに取り掛かり、計画的に進めることが大切です。
名簿作成(園児の把握)
まずは新年度の名簿作成が必要です。名簿作成は管理職員や事務職員などが担当することが多いですが、クラス編成や担任が決まったら、自分が担当するクラスの名簿を把握し、準備に取り掛かりましょう。
その際、名前の間違い(特に新入園児)がないよう十分注意してください。
教材の準備
教材の発注は担当者がまとめて行いますが、クラス担任は次年度自分が担当するクラスに必要な教材を把握し、数の確認や保育室への移動等を行い準備しましょう。
名前書き
教材は持ち帰って保護者に記名してもらうものもあるかもしれませんが、園で記名する必要があるものも多いでしょう。ロッカーや靴箱など、園内のものは園の職員が記名しなくてはいけません。名前の貼り替えなど3月31日までできないものもありますが、すぐに張り替えができるよう早めに作成しておくことが必要です。
新入園児の受け入れ準備
新入園児とは「一日入園」や「入園説明会」などで顔を合わせる機会がある場合もありますが、ほとんどは新年度が始まってからの顔合わせになります。名前や家庭の環境など基本的な情報はできるだけ把握し、受け入れの準備を進めましょう。
入園式準備
新入園児を迎える大切な行事です。4月から新たに入園する園児以外に、途中入園児が参加する場合もあります。招待状の渡し漏れや名簿の不備などがないよう、ダブルチェックでミスを防ぎましょう。
書類作成
新年度の書類関係は、前年度のうちにすべて揃えておく必要があります。4月1日から必要な書類もあるからです。4月1日から必要がないものは、新年度に入ってから作成してもよいですが、できるだけすべて揃えておくことで忘れたり慌てたりという事態が避けられるでしょう。
打ち合わせ
4月に入った当初は職員も園児も新しい環境に戸惑い、嵐のような毎日が始まります。前年度のうちに新年度に向けた打ち合わせを行い、職員間で共有しておくことがトラブルや事故を防ぐうえで安心できるでしょう。
複数担任
クラス内で、担任間の分担や1日の流れなどを細かく打ち合わせておくことが大切です。実際に新年度の保育が始まったときのことをシミュレーションし、実際に新年度がスタートした後も修正しやすくなります。
係分担
園全体の係分担も前年度中に決めておくと、余裕をもって準備することが可能です。通年の係や、毎月の行事や業務担当もしっかり決めることで、各自の計画が立てやすくなります。
配布物
園だよりやクラスだよりのほか、新年度に当たって保護者に配布するものは多いでしょう。
特に新入園児の保護者はわからないことが多く不安を感じていますので、わかりやすい表現や伝わりやすい内容を心掛けましょう。年齢や進級児と新入園児によって配布物が異なる場合もありますので、間違いがないよう注意してください。
新職員を迎える準備
4月から新しい職員を迎えることも多いので、ロッカーなど個人のスペースの準備を整えましょう。新職員は現職員以上に戸惑い、不安を感じるものですが、旧職員も余裕がなく一つひとつ丁寧に伝えることが難しいときもあります。3月中に新職員用のマニュアルを準備しておくなど、旧職員、新職員双方がスムーズに新年度を始められる準備を整えましょう。
環境整備、装飾
気持ちよく園児を迎え、新年度がスタートできる環境を整えましょう。机や椅子など備品の数や状態の確認、不足分の発注などは早めに済ませておく必要があります。年度末は、事故が起こりにくい環境になるよう模様替えを行うよい機会にもなるでしょう。
玄関や保育室内の装飾などは新たに作らなくても以前のものを活用することで業務の軽減につながるので、複数年使えるものを準備し保管しておくことをおすすめします。
子ども達への配慮
4月からいきなり新しい環境に変わることは、園生活に慣れている在園児も不安を覚え、不安定になりやすいものです。3月中に新しい保育室に行ってみたり、異年齢同士の交流をはかったりするなど新しい環境を想定し、少しずつ慣れていけるような配慮を工夫しましょう。
まとめ
保育士が年度末にやっておくべきことを、「当年度の締めくくり」と「新年度の準備」に分けて解説しました。それぞれたくさんの内容がありますが、同時進行で行わなければならないため仕事の優先順位をしっかりと考え、計画を立てて進めましょう。また、年度末の仕事は1人でできるものではありません。日々の業務に追われていると、先のことを疎かにしがちですが、職員同士で声を掛け合い、確認や協力をしながらしっかりと1年間を締めくくり、新年度を気持ちよくスタートしましょう。
ライタープロフィール
西須 洋文さん
30年以上、保育士として保育園やこども園に勤務。現在はWebライター、リトミックや親子遊びの講師などとして活動中。
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