お正月の由来 保育園で子ども達にどう伝える?
- 保育園行事
- 2022/12/07
お正月は、数々の日本の伝統行事の中でも1年で最初に迎える大切な行事です。時代は変化していますが、昔から伝わる日本の伝統行事を子ども達に伝えていくのも保育士の大切な役割の1つでしょう。
この記事ではお正月の由来について解説します。日本の伝統行事には難しい言葉や内容もありますが、子ども達にわかりやすく伝える方法についてもご紹介します。
お正月の由来
お正月は、幸せを運んできてくれる年神様を家に迎え、家族で祝う行事です。年神様とは、人々の健康や子孫繁栄、五穀豊穣をもたらしてくれる神様だと言われています。新しい年も、家族みんなが健康で暮らせるよう、門松やしめ縄、鏡餅を飾ってお迎えするのです。
お正月飾りの制作を取り入れ、保育室に飾ったり、家庭に持ち帰ったりしてはいかがでしょうか。
制作をする時にそれぞれの由来を話すことで、子ども達の興味を引き出すことができます。
門松
門松は、松飾りや飾り松、立松とも呼ばれ、年神様が家を見つけやすいように目印として家の前に飾られていました。松は1年を通して葉が生い茂る常緑樹であることから生命力が強く、長寿の木とされています。
また、神様が宿る木だとも言われ、昔から縁起がいい植物として重宝されているのです。さらに、松(まつ)という言葉の響きから、「神を祀る(まつる)」「神様を待つ(まつ)」という言葉にもつながっています。
しめ縄
しめ縄には、神様を祀るのにふさわしい、神聖な場所であることを示し、結界を張って厄除けをするという意味で飾ります。つまり、しめ縄やしめ飾りを飾ることで、その内側が清らかな場所となり、魔よけになり、年神様が安心してきてくれると言われているのです。
鏡餅
鏡餅は、神様へのお供え物であると同時に、神様が宿るものという意味も込められています。昔から、米の1粒1粒には神様が宿っていると信じられていました。神様が宿っている米粒を固めて作る鏡餅は、神様の力がさらに強く宿る神聖な食べ物というわけです。
また、鏡は丸い形の銅鏡だったことから、日の光を反射し太陽のように輝くことが連想され、鏡に神様が宿ると考えられていました。そのため、餅を鏡のように丸く作られるようになったのです。
そして、年神様は新年の幸せとともに魂を分けてくださると考えられており、鏡餅は魂の象徴としての意味もあります。鏡開きは、お正月を終えて年神様をお見送りした後に家族みんなで食べ、神様の力をいただこうという気持ちが込められているのです。
お正月の期間
お正月は旧暦で言うと1年の1番初めの月、つまり「1月」の別称でした。現在は、1月1日から7日間、地域によっては15日頃までがお正月の期間です。その中で1月1日は“元日”、3日までは“三が日”、7日までを“松の内”と呼びます。松の内の間は、門松やしめ縄などを飾ります。
お正月飾りを飾る期間は、正月始めと言われる12月13日以降はいつ飾ってもよいのですが、避けた方がよい日もあります。12月29日は「苦(9)が二重になる」ことから、そして12月31日は「一夜限り」が葬儀を連想させてしまうので、飾るのは避けましょう。
お正月飾りを片付けるのは、松の内が過ぎてからとされています。1月15日までには片付け、お焚き上げに持って行ったりお清めをしたり、適切に処分しましょう。
子ども達への伝え方
子ども達にはお正月の由来をそのまま伝えても難しいので、お正月の由来をわかりやすく伝えられる絵本や紙芝居を読み聞かせるなど、年齢に合わせて伝え方を工夫しましょう。
最近でも鏡餅はほとんどの家庭で飾りますが、門松やしめ縄を飾る家庭は非常に少なくなりました。実物があれば見せたり、写真やペープサートなどを用いて視覚的に見せたり、物語にして聞かせたりすると理解しやすいです。
大切なことは、12月31日で1年が終わり、また新しい年が始まるということを子ども達が理解できることです。子ども達と一緒に新しい年を迎える準備を整え、明るい気持ちで新年を迎えられるよう配慮しましょう。
お正月にまつわるあれこれ
その他、お正月には様々な楽しみやしきたりがあります。少しずつ理解できるように工夫しましょう。
新年の挨拶
「あけましておめでとうございます」という新年の挨拶は、年の初めに年神様が家に来るのはとてもおめでたいという気持ちから生まれた挨拶だという説があります。お正月を迎えたら家族で挨拶を交わし合えるよう伝え、新年の保育が始まったら、園でも子ども達と元気に新年の挨拶を交わしましょう。
お年玉
子ども達が楽しみにしているお年玉は、昔は年神様が宿っていると言われていた鏡餅を家族みんなで分けて食べていたことが始まりです。現在のお年玉の中身はお金ですが、最初は餅だったと伝えると子ども達の興味は増すでしょう。お年玉をもらうことが当たり前ではなく、感謝の気持ちがもてるようにお話をし、大切に使うことも伝えられるとよいですね。
年賀状
お世話になった人や遠方でなかなか会えない人などに、新年の挨拶を書いて送る年賀状。松の内までに相手の家に届くように送り、松の内後は寒中見舞いとして出します。最近はメールやLINEなどが主流となり、年賀状を出す人は減ってきていますが、気持ちを伝える大切なものであることを子ども達に伝えられるとよいですね。
年賀状制作を取り入れている保育園もあると思います。お正月飾りや来年の干支をモチーフにした手作りのスタンプを押したり、絵を描いたり、折り紙を折るなどいろいろな作り方が工夫できます。
文字に興味が出てきた年中児や年長児は文章を書くことに挑戦するのもよいでしょう。家族や友だちに向けて書いたり、出来上がったものを展示したり、子ども達と一緒に制作を楽しみましょう。
十二支
「干支」と「十二支」は混同されやすいのですが、実はこの2つは異なります。しかし、子ども達には難しいので、「十二支」について説明し、理解できる年齢には今年の干支や自分の干支を伝えられるとよいでしょう。
中国では昔から“12”という数字を大切にしており、12種類の動物を「子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥」の順番に並べたのです。順番の由来については、子ども向けの絵本や紙芝居がたくさんあり、楽しいストーリー仕立てになっているのでおすすめです。
おせち料理
年神様のおもてなしの1つとしてお供え料理を作ったものがおせち料理の始まりです。神様にお供えし、自分達も一緒に食べることで、神様の恩恵を受けることができると言われています。それぞれの料理には縁起を担ぐ意味が込められており、「まめに働き、元気に暮らせるように」という意味が込められた黒豆や、「腰が曲がるほど長生きできるように」という意味の海老などは有名です。おせち料理をお重に詰めるのには、「福を重ねる」という意味があります。
おせち料理が日持ちする保存食ばかりなのは諸説あり、正月中に出る火は歳徳神の神聖なものとされていることから、火の使用を慎むという説や、台所の神様にも正月くらいはゆっくり休んでもらいたいという気持ちを込める説などがあります。
初詣
新年を迎えて、初めて神社やお寺に参拝する初詣。子ども達には「いつも見守ってくれている神様に、1年間のお礼と新しい1年もよろしくお願いしますという気持ちを込めてご挨拶をしましょう」などというように伝えると理解しやすいでしょう。
初詣に行く家庭は多いので、保護者向けのおたよりでも由来を紹介し、家庭で初詣に行く機会に子ども達に伝えてもらうよう保護者に啓蒙していくこともおすすめです。
獅子舞
獅子舞は、インドから伝わったと言われているかぶり物をかぶって行う民俗芸能です。モチーフはライオンで、お正月に獅子舞から頭を噛んでもらうと1年間無事に過ごすことができるという言い伝えがあります。子どもが頭を噛んでもらうと、頭がよくなるという言い伝えもあります。
江戸時代初期に、獅子舞を踊りながら全国を回って悪魔祓いをした団体があり、日本全国に広まったとされています。
獅子舞も、制作のモチーフによく使われています。実物は少し怖そうに見えますが、折り紙で折ったり貼り絵にしたりすることで、親しみがわくのではないでしょうか。
まとめ
お正月の代表的な伝統の由来について、ご紹介しました。現代ではあまり目にする機会がなくなったものもありますが、昔から伝わる日本の伝統について、子ども達が理解できる機会が提供できるとよいですね。
お正月はお年玉やお餅、おせち料理、帰省など子ども達にとって楽しいことがたくさんあります。保育園でも、お正月を迎えて喜ぶ子ども達の気持ちに寄り添い、明るく新年の挨拶をして楽しく過ごしましょう。
しかし、それだけではなく、1年無事に過ごすことができたことに感謝し、新しい年に希望をもてるような働きかけを、ぜひ工夫してみてください。
ライタープロフィール
西須 洋文さん
30年以上、保育士として保育園やこども園に勤務。現在はWebライター、リトミックや親子遊びの講師などとして活動中。
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