子ども5人に1人?敏感な子ども「HSC」について知っておこう!

他の子どもよりも敏感な子どもを意味する「HSC」。その特徴、保育園での対応のポイントなどを紹介します。

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HSCとは?

外部からの刺激に敏感な子どものこと

HSCとは、まだ一般的でなく見慣れない言葉かもしれません。HSCは「Highly Sensitive Child」(ハイリー・センシティブ・チャイルド)の略称です。外からの刺激にとても敏感で、その影響を強く受ける子どものことを指します。

このHSCですが、子どもの15〜20%に存在していると言われています。つまり5人に一人ぐらいの割合にであり、さらに近年その事例の報告が増えています。

HSCは発達障害の病名?

HSCは医学的な診断名ではない!

まずHSCは、医学的な診断名ではないことを知っておきましょう。つまり発達障害や病気ではありません。「とても敏感」という生まれつきの気質です。
また、後天的なものではないので、例えば「ママが甘やかしているからじゃないか?」などと原因を詮索するのは無意味です。

HSCの子は生まれつき敏感なために、人一倍刺激を強く受け止めます。そのため、不快感を強く感じたり、人の気持ちに共感しすぎてつらくなったりする傾向があります。

HSCの特性を紹介!

HSCには、どのような特性があるのでしょうか。HSCの提唱者であるアーロン博士があげている特性について紹介します。

物事を深く処理する

HSCの子は、物事を受け流さずに深く受け取る性質があります。そのため、物事の本質を突いた、大人もはっとするような質問をすることもあります。
例えば、保育園の行事に疑問を持ち、「なぜしなくてはいけないの?」と聞いてきたりします。そうした場合、無理に参加させずに、その子なりの参加の仕方を考える必要があります。

過剰に刺激を受けやすい

HSCの子は、他の子なら気にならないような感覚刺激も無意識に受け取ります。そのため、肉体的、精神的に負荷がかかりやすく疲れやすく、前触れなく急に泣き出したりすることもあります。
そういう場合は、その子がひとりになって落ち着ける場所を用意してあげるなどが効果的です。

感情の反応が強く、共感力が高い

感情の振り幅が大きいため、よく泣いたり、怒ったり、怖がったりなどします。さらに、他の人の負の感情を強く受け取り、反応しやいのも特徴です。
例えば、他の子が叱られているのに、関係のないHSCの子がビクビクしてしまうこともあるようです。

ささいな刺激を察知する

かすかなにおい、小さな物音などが、HSCの子には気になってしまいます。そのため、給食が苦手だったり、人の集まるイベントへの参加を嫌がったりします。
そのような場合は、いずれも無理強いしないようにすることが大切です。

保育者としてすべきことは?

HSCの子に対応する際に、保育士が気をつけるべき点について紹介します。

本人のペースを尊重し、無理に集団に合わせない

保育は集団行動になりがちですが、特にHSCの子は集団のペースに無理に合わせないように配慮しましょう。その子のペースを尊重することが、自己肯定感を高めることにもつながります。
更に、HSCの子は、うまくできなかったことを深刻に受け止める傾向があるので、そのあたりを考慮して保育を行う必要があります。

園全体で共有し、見守る

担任の保育士だけでなく、園の職員全体で、HSCに対する理解、情報共有しておくことが大切です。具体的にどの様な刺激が苦手なのか、対応方法などを共有しておきましょう。

声がけを工夫する

すべての子どもに言えることでもありますが、特にHSCの子はうまく説明できない傾向があります。たとえ調子が悪かったとしても保育士がうまく誘導し、「お腹が痛いのかな?」「これがイヤなのかな?」など、答えを導き出してあげるとよいでしょう。

保護者との関わり方は?

慎重な対応が大切!

HSCの子の保育では、特に保護者との関わりが重要になってきます。ただし、HSCは医学的な検査でわかるものではありません。なので、その伝え方に関しては慎重に行う必要があります。
保護者が「うちの子は発達障害ではないが、何か気になっている」と思っていた場合、HSCのことを知って、疑問が晴れて救われた気になることは考えられます。一方で「なぜそんなことを言うのか」と、保護者が気分を害することも考えられます。

いずれにせよ、園長とも相談して、保護者にどのように話すのかをきちんと考える必要があります。もし、保育士と保護者で子どものHSCについて共通認識を持てた場合は、こまめに連絡を取りながら、連携していきましょう。
「こうした場面で、このように対応するとスムーズでした」など、双方が情報を持ち寄って、子どもの保育に役立てることが可能となります。保護者も保育園が関わってくれることで、肩の荷が下りることもあるでしょう。

まとめ

HSCは発達障害とは異なり、その子の生まれ持った気質となります。
医学的な診断も伴わず、一般にまだ理解も進んでいないため、自治体からの補助なども期待できません。そのため、現場で各自が工夫していく必要があります。
ただし、「子ども一人ひとりの違いを受け止めて、その子のペースに合わせて保育をしていく」、それはHSCの子だけでなく、子どもたち全体の保育にも関わってくる考え方です。

HSCの子を保育していくことは、そうした保育の本質を見つめ直していく作業をすることにもつながっているのです。

ライタープロフィール

玉田 洋さん
保育園運営企業で、子育て雑誌編集長を経験し、その後、都内で保育士として勤務する。現在は「森の保育園」を計画中。

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