園長に求められるリーダーシップ 〜園を引っ張る人はこんな人がいい!〜1
- 保育士お役立ち情報
- 2022/02/01
現在園長をされている方、これから園長職に就かれる方、園長としてどのようなリーダーシップが大切か、一度振り返ってみませんか?運営組織の方も、是非ご覧ください。
リーダーの質により保育士のパフォーマンスが変わる
リーダーの質が保育士の能力発揮に影響を与えることは、様々な研究からわかっています。
ご自身もこれまでの保育者人生において、自分の力を発揮しやすい上司と、そうでない上司を経験されたかと思います。
今回は、英国で行われた研究から、園長や主任などの、リーダーに求められる要素について見ていきましょう。
質の高い保育施設に見られるリーダーシップ10の要素
英国で幼児教育に関する国家政策の一環としてSirajBlatchford & Manni(2007)が行った研究では、次の10の要素がまとめられています(上田,2015より訳を引用・参考)
それでは、研究からわかったことについて、詳しく見ていきましょう。
1.園全体での保育目標の明確化
リーダーは、園で働くすべての人が明確な目標を共有できるようにサポートすることが大切だということがわかりました。
また、保育目標が子ども中心であり、それが園全体に共有されていて、更に職員が共に発展させていくことが奨励されている環境であることが重要ということも分かっています。保育目標の方向性の違いには関係がありませんでした。
<ふり返りポイント1>
・あなたの園の保育目標は明確になっていますか?
・あなたの園では、全ての職員に保育目標を共有できていますか?
もしできていないかもしれないと感じたなら、まず保育目標を明確にし、それを職員に共有することに取り組んでみてください。
2.共通の認識を持つ
共有された保育目標を達成するには、リーダーがその道筋を明確に示し、職員に共通の認識を持ってもらうことが大切です。目標を共有できていても、具体的な実行方法の認識にズレがあれば、時として職員が異なった方向に進んだり、対立してしまったりする場合もあるからです。
職員に共通の認識と実行方法を理解してもらうために、質の高い保育施設の多くでは、初期段階でのスタッフ育成研修への参加を奨励していることがわかりました。
◆共通認識を持つにはオープンな雰囲気が大切
協調的でオープンな雰囲気を伝えることも、共通認識を持つ助けとなることがわかりました。オープンな雰囲気を伝えるには、次のような行動をとってみましょう。
これらのことに取り組むことで、率直な意見を伝えあえる雰囲気ができ、園で大切にしたいことに対する理解が深まったり、誤解が生じたまま物事が進むことを防ぐことができたりするでしょう。
心理的安全性のある組織(メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと)についてまとめたこちらのコラムも参考にしてみてください。
■関連コラム:
パワーハラスメントにならない指導の仕方2
https://www.e-hoikushi.net/column/457/
パワーハラスメントにならない指導の仕方3
https://www.e-hoikushi.net/column/461/
共通の認識を築いていく上では、より良い方向に進むための変化は避けられません。そのことを認識でき、変化は必然という考えのもと、計画を管理していけることがリーダーには大切です。
<ふり返りポイント2>
・あなたの園では、入職後初期に共通認識を持てるような研修を行っていますか?
・共通認識をすり合わせられるようなオープンな雰囲気がありますか?
・あなた自身が変化を恐れてはいませんか?
入職したてのスタッフだけでなく、既存スタッフの間に保育の質に影響が出るようなズレがある場合も、改めて実行方法を共有してみてください。ただし、異なる方法を使っているスタッフにもそれなりの理由がある場合があるので、一方的にこうしようと統一させるのではなく、オープンな雰囲気で意見を出し合い、より良い方法にしていくことが望ましいです。
また、保育の質や方向性に影響しない違いであれば、そろえ過ぎずにそれぞれのスタッフの良さを生かしていくことも大切です。
3.効果的コミュニケーション
コミュニケーションが大切であることは言うまでもありませんが、どのようなコミュニケーションが効果的かというと、例えば次のようなものが含まれます。
翻訳、通訳、要約には、誤解が起こることを防ぐ、理解したということを伝える、整理するという効果があります。
<ふり返りポイント3>
・効果的なコミュニケーション一覧を見て、スタッフとのコミュニケーションで行えているか、振り返ってみてください。
「これは最近していないな」と思うことがあれば、意識して行ってみてください。
一方的に伝えるのではなく、職員と相互性ある対話ができることが大切です。
効果的なコミュニケーションを行うことで、職員の間で、方針や目標達成までの道筋が園全体に浸透していきます。
4.省察の推奨
質の高い保育施設では、リーダー自身が自分の実践をふり返り考察しており、それをスタッフにも奨励しているということがわかりました。
ふり返りを可能にするには、組織として日常的な業務の中で、ふり返りを行うメカニズムを確立しておくことが大切です。実践したことをくり返し省察していくことで、独自の改善策を見出すことができるようになるのです。
園児の個別の指導計画とは別に、スタッフ自身が目標づくりとふり返りを行えるシステムを作ってみましょう。例えば、ふり返り項目をいくつか設定し、「よくできていた」〜「全くできていなかった」などの評価に〇をつけるというものなら、あまり時間をかけずにふり返ることができます。
例えば、3.で取り上げたコミュニケーションを例に挙げるならこのような形になります。
<ふり返りポイント4>
・あなたの園では、日々の保育や業務をふり返ることができるシステムがありますか?
人材不足から時間の確保が難しい園も多いと思われますが、月1回、季節ごとなど、可能な範囲で良いので、なるべくふり返りの機会を組織として作りましょう。
ICT化している園で、ソフトに職員のふり返り機能がある場合は活用してみるのも良いでしょう。
5.モニタリングと評価
スタッフを観察し評価することは、幼児教育施設の運営において重要で不可欠なものです。質の高い保育施設のリーダーがスタッフを評価する際に最も重要視していたのは、子ども達の学習と発達を支援し、向上させているかどうかという点で、彼らは日常的な保育士と子ども達のやり取りが子どもの発達に直接的な影響を与えるということを認識していました。
そういった視点でスタッフを観察・評価しているため、継続的に保育の質の水準を向上させることができるのです。
<ふり返りポイント5>
・スタッフ一人ひとりを、子どもたちの学習と発達を支援しているかという点で、観察・評価していますか?
スタッフの評価というと、勤務態度や保育スキル、成果、人間性、コミュニケーション能力などの点で見てしまいがちですが、日常の保育の中での育みに目を向けてみてください。
次回も引き続き、残り5つの要素と、ふり返りのポイントを見ていきましょう。
★次の記事はこちら
園長に求められるリーダーシップ〜園を引っ張る人はこんな人がいい!〜2
≪心理カウンセラープロフィール≫
松本 いずみ
公認心理師。明治学院大学大学院心理学専攻修士課程修了。ストレスチェック実施者研修修了。スクールカウンセラーとして都内中高で12年間従事するかたわら、メンタルヘルスサイトにて一般向けに心理学コラムの執筆とメールカウンセリングを担当。プライベートでは0歳と7歳の2児の母。最近は「あつまれどうぶつの森」を家族で楽しんでいます。
参考
SirajBlatchford & Manni 2007
Effective Leadership in the Early Years Sector (ELEYS) Study
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上田淑子 2015 保育所・幼稚園の園長が保育の質の向上のために重要視しているリーダーシップ役割—予備的アンケート調査から―
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