怒りの感情も否定せずに受け容れよう〜アンガーマネージメント〜
- 保育士お役立ち情報
- 2021/12/02
上司や同僚の言動にイラッ! 園児の困った行動にイラッ! 仕事で疲れているのに家族の態度にイラッ! 一生懸命働いていると、イラッとしてしまうことってありますよね。そんな時、あなたはどのように自分の「怒り」の感情と付き合っていますか?今回は「怒り」の感情を抱いた時に、どうすればいいのか見ていきましょう。
そもそも、怒りは悪いもの?
「怒り」という感情は、不快感を伴う感情です。できれば、感じたくないですよね。
しかし、怒りを感じる事自体、悪いことなのでしょうか?それに、感じないように努力すれば、感じずにいられるものなのでしょうか?
いいえ、違いますよね。
誰でも嫌なことをされたり、経験したりすれば、怒りを覚えるのは自然なことです。
不快感を伴うのであまり沸いてほしくはない感情ではありますが、沸き起こること自体は「嬉しい」、「楽しい」などのポジティブな感情と同じ。「怒り」を感じること自体に良いも悪いもないのです。
それに、感情は、一時的に我慢することはできても、少しずつたまっていき、あふれ出てしまうこともあります(パートナーに対する怒りはこのパターンが多いかもしれません)。
ですから、大切なのは、怒りを感じないようにすることではなくて、
アンガー(怒り)をマネージメント(どのように受け入れ、処理・表現していくか)することなのです。
では、アンガーマネージメントの具体的な方法を見ていきましょう
1.怒りをやり過ごす方法
カッとなって失敗をしやすい人に、まずオススメな方法です。カッとなった時の言動は、後で後悔も大きいものですし、取り返しがつかなくなる場合もあります。なるべく予防したいものですよね。
6秒ルール
イラっとしたら、頭の中で「1・2・3・4・5・6」と、ゆっくり数を数えてみましょう。深呼吸をしながら数えるのも効果的です。
怒りのピークは6秒と言われていて、時間が経つうちに、少しずつ怒りの気持ちは落ち着いていきます。
もちろんそれで、すぐにスッキリ怒りが消えるというわけではないのですが、相手を怒鳴りつけたり、人や物を傷つけたり、衝動的な行動をとることを避けることができます。
その場を離れる(タイムアウト)
イラッとした時は一時的にその場を離れることも効果的です。相手が園児で、一人で見ている時は難しいですが、ペアで仕事をしている時であれば事情を話さなくても、「すみません、ちょっとトイレ行ってきても良いですか?」と、何か理由をつけてその場を一時的に離れてみても良いでしょう。
怒りが10段階でいくつか数値化する
客観的に怒りをとらえるために、自分の今の怒りが10段階でいくつか考えてみましょう。
思ったほど怒りが強くないことに気づけたり、反対に、たいしたことないと思って長い間我慢していたことが、本当は自分にとって結構大切なことだったとわかったりすることがあります。
このように客観的にとらえることができれば、その怒りについて、今後どのように対処していけば良いのか、冷静に考えていくことができるようになります。
2.背景にある感情を振り返る
怒りは二次的な感情と言われています。多くの場合、悔しさや不安など、背景にある別の感情によって引き起こされます。
自分はどうしてイラっとしたのか、振り返ってみましょう。
例えば、園児が泣き止まなかったときにイライラした時は…
・上手く対処できないことへの焦り
・このまま泣き止まなかったらどうしようという不安
・同僚に、能力がないと思われないかという心配
などの感情が背景にある場合があります。
こういった時、相手に怒りをぶつけても解決はしませんが、もしも背景にある感情に気づくことができれば、周囲に相談したり、助けを求めたりすることができ、抱いた感情の緩和や問題解決につなげることができるのです。
3.思い込みではないか、チェックする
以前、リフレーミング(https://www.e-hoikushi.net/column/423/)についてお伝えしました。
<出来事>に対して起こる<感情>は、<とらえ方>によって変わるというものです。
アンガーマネージメントにおいてもこの考え方は、有効です。
例えば先輩に注意されたときにイラっとした場合、あなたはどのように捉えますか?
このように、自分が感じたことが現実的に正しいとは限りません。別の可能性にも目を向けてみましょう。第三者に客観的な意見を聞いてみるのも良いですね。
4.本当に求めていることを伝える
怒りは適切な方法を取ることができれば表現しても構わないものです。では、どのように伝えればよいのか見てみましょう。
アサーティブに伝える
「相手の気持ちも自分の気持ちも大切にした表現」を、アサーティブな伝え方(アサーション)と言います。
次の手順で、伝えてみましょう。
@ 率直な気持ちを伝える
A 自分の主張(お願いしたいこと)を率直に伝える
B 具体的な要望を伝えつつ、相手を尊重(相手の意見を聞くなど)する
例えば、仕事で疲れて帰ってきたのに、他の家族が家事を手伝ってくれない時は…
「@私は今日、とても疲れてるの。
Aだから、家事を手伝ってほしい。
B今、流しにある洗い物を洗ってもらえない?」
などと、伝えてみましょう。
関連コラム:
自分の気持ち、同僚に伝えることができていますか?
https://www.e-hoikushi.net/column/379/
I(アイ)メッセージで伝える
Iメッセージとは、「私」を主語にして、相手に伝える方法です。
例えば、よく遅刻する後輩に声をかける時は…
「あなたは、遅刻してばかり。保育士としての自覚が足りない。」
↓
「私、遅刻する人がいると、園児の対応に支障が出るから困るのよ。」
などと、言い換えてみましょう。
相手の人格に批判的にならずに、本来の要望や困っていることを伝えることができます。
5.発散の仕方を変えてみる
SNSでよく怒っている人のフォローをしない
最近ではSNSで悩みをつぶやく人も多いですよね。
確かに、悩みを人に聞いてもらったり、文字にして表現したり、同じ立場の人と情報交換をしたりすることは、ネガティブな感情への対処として有効です。
しかし、自分や他人の怒りを含めた、ネガティブなつぶやきを繰り返し見ることはあまりお勧めできません。なぜなら、怒りなどネガティブな感情は伝染しやすいから。怒っている人たちと一緒にいると、イライラが解消されるどころか、更にイライラしやすくなってしまいます。
TL(タイムライン)にネガティブな言葉や言い争いばかりが並んでいるという方は、フォローしているアカウントを整理したり、いっそのこと、アカウントを作り直して仕切りなおしたりするというのも一つの方法ですよ。
元気がもらえたり、優しい気持ちになれたりするようなアカウントをフォローするようにしてみましょう。
やけ酒など暴飲暴食は控える
嫌なことがあると、お酒を飲んでスカッとしたくなる時もありますよね。たまにならいいのですが、毎日のようにやけ酒状態になっているというなら心配です。
お酒を飲むと、陽気になりすぎて大きな失敗をしてしまったり、反対にネガティブな感情が強くなって落ち込みすぎたりしてしまう上に、身体を壊し、睡眠の質も下げてしまいます。そして、体調不良や睡眠不足は更に怒りを引き起こしやすくなります。くれぐれも、楽しい範囲でとどめてくださいね。
ゲームは時間を決めて
ゲームもストレス解消には良いのですが、ダラダラ続けるとあとで「休日をゲームだけで終えてしまった…」と罪悪感を覚えたり、生活のリズムも崩れたりしがちです。時間を決めて楽しむようにしてくださいね。
おわりに
アンガーマネージメントはご紹介したことだけが全てではありません。今回は、取り組みやすいことや、すでに以前のコラムでお伝えしたことから応用できることなどをまとめました。是非できることから始めてみてください。
職場では支障がないけれど、仕事のストレスで家族に当たってしまいがちという人も注意が必要です。家族関係が悪くなることも心配ですが、家庭がうまくいっていない状態ですと、職場でもストレスを感じやすくなります。
どうしても怒りが抑えられないという方は、メンタルクリニック、心療内科、精神科などを受診する、カウンセリングを受けるなどして、専門家と一緒にアンガーマネージメントを行っていきましょう。
≪心理カウンセラープロフィール≫
松本 いずみ
公認心理師。明治学院大学大学院心理学専攻修士課程修了。ストレスチェック実施者研修修了。スクールカウンセラーとして都内中高で12年間従事するかたわら、メンタルヘルスサイトにて一般向けに心理学コラムの執筆とメールカウンセリングを担当。プライベートでは0歳と7歳の2児の母。最近は「あつまれどうぶつの森」を家族で楽しんでいます。
参考
安藤俊介 「怒り」が消えるこころのトレーニング ディスカヴァー・トゥエンティワン
篠真希、長縄史子 イラスト版 こどものアンガーマネージメント 怒りをコントロールする43のスキル 合同出版
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