あなたが仕事に求めているものは?

あなたが保育士の仕事を選んだ理由は何ですか?
子どもが好きだから?教えることが好きだから?お世話になった保育士さんに憧れて?
それでは、今現在は、仕事に何を求めて働いていますか?

もしも、「正直、この先、仕事とどう向き合えばわからない」という人は、今現在の自分自身の仕事についての価値観を振り返るのに、ちょうど良い時期かもしれません。
今回は「あなたがお仕事で優先したい事柄」と、現在の職場とのギャップ、そのギャップを乗り越えるにはどうすれば良いのかについて考えていきます。

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14の労働価値

アメリカのキャリア発達研究者で心理学者でもあるドナルド・E・スーパーは、労働に対する価値観を14に分けました。 下の表は、その14の労働価値をもとに作成したチェックシートです。
こちらを使って、あなたが働くうえで大切にしたいことを振り返ってみましょう。

<手順>

1.各項目に対し、得点(A)に、あなたが働くうえでの優先度得点を記入してください。
2.各項目に対し、得点(B)に、現在の職場での満足度得点を記入してください。
3.最後に、ギャップに(B)から(A)の得点を引いた数字を記入してください。
一度画像を保存やスクショなどして、書き込まれると良いでしょう。
あまり時間がない方は、大切だと思うものに〇をつけてみるだけでも良いいですよ。

・得点(A)が高い項目…仕事をするうえで、あなたが優先したいことです。一つとは限りません。
・点数(A)が低い項目…仕事をするうえでは、あまり重視していないものです。
・ギャップが−…職場で満足が得られていないものです。
・ギャップが0か+…職場で充分得られているものです。
さて、あなたが優先したいものは何でしたか?

価値観は人それぞれ

このチェックシートは、どれを選んだら正解・不正解というものではありません。また、「こうあるべき」というものでもありません。
それは、何を優先したいかの価値観は、人によって異なるものだからです。そして、人生の時期によって価値観は変わっていくものです。
今現在、自分が働くうえで何を大切にしたいのか知ることで、今後、仕事をどのように続けていくか考えたり、メンタルヘルスの向上につなげたりしていきましょう。

ギャップが大きい時に切り抜けるコツ

それでは、あなたの優先度が高い項目とギャップが大きい場合に何ができるか、見ていきましょう。

1. 能力の活用

あなたは働くうえで、自分の能力が発揮できているかどうかを大切にしているようです。
例えば、ピアノが得意な人なら行事で伴奏担当に選ばれたり、工作が得意な人なら制作のアイディアを出してほしいと頼まれたりすると、能力が発揮できていると感じられるでしょう。
ギャップが大きい場合は、「私、〇〇するのが好きなんです」「〇〇するのは、苦ではないタイプなんです」などと、あなた自身が得意なことを職場でアピールしてみましょう。周囲はあなたの能力に気づいていないだけで、知ってもらえれば能力を発揮する機会が得られるかもしれませんよ。知っていて、少しもやらせてもらえないという場合はパワハラの可能性もあるので注意が必要です。

2. 達成

あなたは働くうえで、良い成果が得られたという実感を大切にしているようです。例えば自分が作った工作でクラスの園児が喜んでくれたり、行事が成功したり、自分の提案で業務が改善されたりするなど、良い結果が得られると達成感が得られます。
ギャップが大きい場合は、大きな成果にこだわり過ぎているかもしれません。子どもたちの成長を振り返ったり、「今日も一日安全に、楽しく過ごさせてあげることができた」など、日々維持できていることにも目を向けたりして、自分で自分を褒めてみてくださいね。

3. 美的追及

あなたは働くうえで、美しいものを創り出せることを 大切にしているようです。保育園で美しいもの…というと何が該当するかは難しいところですが、何か、とてもうまく仕上げることができた時に感じられるかもしれません。
ギャップが大きい場合は、職員による創作物の要求がそこまで高くなかったり、やり足りなかったりするのかもしれません。行事や季節ごとの装飾など、他クラスの分もサポートしたり、アイディアを出したり、装飾関係のとりまとめをする役割を担当してみたりしても良いかもしれませんよ。

4. 他愛性

あなたは働くうえで、誰かの役に立てることを大切にしているようです。保育士はどの仕事も誰かのためにつながることなので、ほとんどの人が満たされているでしょう。
ギャップが大きい場合は、役に立てているのに実感が持てていないということがあるのかもしれません。して当然のことだから…と過小評価していないでしょうか?些細なことで良いので、誰かのために何かできたら、(例えば、園児や保護者を笑顔にできた など)、自分を褒めてあげてくださいね。

5. 自律性・自立性

あなたは働くうえで、自分の判断で行動できることを大切にしているようです。誰かの指示を受けなくても、自分が良いと思ったことを実行することが一定の範囲で認められている環境を望んでいます。
ギャップが大きい場合は、園の方針や上司の指示通りに動かないといけないことに、息苦しさを感じているのかもしれません。ミーティングや普段の雑談の中などで、「〇〇は、〜〜の方法でやっても大丈夫ですか?」などと、打診してみましょう。何か一つでも自分の意見が通ればしめたものだという程度で、気軽に伝えてみてください。それでも多くのことであなたの意志で動くことが許されないのであれば、自立して動けるような園を探してみるのも良いかもしれません。

6. 創造性

あなたは働くうえで、新しいものやアイディアを生み出せることを大切にしているようです。制作や行事などで、今までとは異なるやり方、新しい方法を考え、実行できることで満たされるでしょう。
ギャップが大きい場合は、年中行事や日々の活動などで、かわり映えのないことを踏襲しなければいけないことや、業務の改革が行われないことなどに不満があるのかもしれません。歴史のある園では、管理職が未知のことに不安があり、新しいことを受け入れにくいかもしれません。そういった場合は、教育的な効果のエビデンス(根拠)など、説得力のある情報の裏付けをしたうえで提案してみるのも、お勧めです。

7. 経済的価値

あなたは働くうえで、お金の面で安定した生活が送れることを大切にしているようです。保育士の給料は改善されてきてはいますが、まだ多職種の年収と比較すると安いというのが現状です。ですから、この項目の優先度が高い人は苦労されるでしょう。
ギャップが大きい場合は、経験年数を重ねたり、副主任やリーダーなどの役職に挑戦したりして、処遇改善等加算を目指すのも良いでしょう。それでも満足できない場合は、他園や他業種に転職するのも一つの方法です。働く地域によって補助金に差があるので、その点もチェックしてみてください。

8. ライフスタイル

あなたは働くうえで、自分に合ったペースで動けることを大切にしているようです。勤務時間や業務の忙しさなど、適切だと感じられるペースは人それぞれです。これは、ワーク・ライフ・バランスにも関わってくる部分です。
ギャップが大きい場合は、シフトや役割、業務内容について、自分の希望とのズレが大きいのかもしれません。都合をつけられるからと言って、他の人の都合を優先しすぎていないでしょうか?同僚のことを考えると自由にはなかなかできないでしょうけれど、せめてもう少しだけ、ご自分のペースも大切にしてあげましょう。負担になっていることを上司に相談するのも良いですね。また、シフトがある程度固定されている園を探す、転職時に時間枠の固定が可能か確認するのも良いかもしれません。

9. 身体的活動

あなたは働くうえで、身体を動かせることを大切にしているようです。保育士は、お世話をしているときも、遊びを見守っているときも、常に動き回っているお仕事ですよね。
ギャップが大きい場合は、動き足りないと感じているのかもしれません。0歳クラスを担当している、あまり身体を動かす機会がない園であるという場合もあるでしょう。他クラスの外遊び、園庭遊びなどのヘルプに呼んでもらう、活動によって交代するなど、提案してみるのも良いかもしれません。
反対にあまり動きたくないのに、動かなくてはいけないという状況の人もいるかもしれませんね。体力的に厳しい場合は、あまり無理をせず、周囲に相談して可能な時だけでもヘルプに入ってもらうようにしましょう。

10. 社会的評価

あなたは働くうえで、仕事の成果をしっかりと評価してもらえることを大切にしているようです。上司や先輩から「ありがとう」「頑張っているね」と声をかけてもらえると、自信を持って働けるでしょう。
ギャップが大きい場合は、あなたの業務に対する正当な評価が得られていないことが考えられます。それは、本当は評価されているのにそれを知る機会がないという場合もあるでしょうし、あるいは、できて当たり前という雰囲気が職場にあり、誰も褒めてもらえない環境、特定のすごくできる人だけが褒められる環境である場合もあるでしょう。
職場で評価が得られ倍場合は、家族や友人など、職場外の人に、自分がどんなことを頑張っているか話し、その頑張りを認めてもらう機会があると良いでしょう。

11. 危険性、冒険性

あなたは働くうえで、わくわくするような活動ができることを大切にしているようです。日々、園児も先生もわくわくドキドキできる活動があるというのは素敵ですよね。
ギャップが大きい場合は、園で心が動かされるような楽しい活動があまり行われていないということかもしれません。それは安全面を考えてのことかもしれませんが、残念なことです。ダメ元で提案してみて、懸念事項を教えてもらい、一つ一つ丁寧に解決していきましょう。また、何人か、協力してくれそうな同僚に根回しをしておき、賛成派を増やしておくのも良いでしょう。

12. 社会的交流性

あなたは働くうえで、色んな人と交流できることを大切にしているようです。たくさんの人とのつながりを持てることでイキイキと働くことができるでしょう。
ギャップが大きい場合は、園児や保護者との関わりに制限がある、あるいは実際には制限されて異なけれど、制限されていると感じているのかもしれません。コロナ禍によって、以前のように保護者と交流できる行事が行えていないことへの、こころの引っかかりもあるのかもしれません。
あるいは、更に多くの人と関わりたいと感じているのかもしれません。地域と交流できる行事を提案してみる、いずれは規模の大きな園や、地域交流の多い園に転職してみるのも良いかもしれませんね。

13. 多様性

あなたは働くうえで、様々な活動ができることを大切にしているようです。保育士の仕事は多岐にわたるため、この点は充実している人が多いでしょう。
ギャップが大きい場合は、仕事が限定され過ぎていて、物足りなさを感じているのかもしれません。もっといろんな業務をしてみたいという場合は、どんなことができるのか上司に伝えてみたり、余裕がある時に、「手伝いましょうか」と周囲に声をかけてみると良いでしょう。
反対に業務が多様すぎて大変という場合は、一人で抱え込まないよう注意が必要です。特に苦手なことは周囲に相談しながら取り組んでいきましょう。

14. 環境

あなたは働くうえで、職場環境の居心地の良さを大切にしているようです。人間関係、設備、立地、シフトなど、様々なことが環境に含まれます。同じ保育士の仕事でも、園によって業務内容には違いがあり、働きやすさも大きく異なります。
ギャップが大きい場合は、かなりの居心地の悪さを感じていることでしょう。長く務めるとストレスはそれだけ強くなっていくので心配です。自分で行動を起こしてみても状況が改善される見込みがなければ、環境を変えることを検討してみるのも一つの方法です。

ギャップのある項目が多い時は…

いかがでしたか?ギャップのある項目は、まず、自分でできる範囲で状況を改善できないか働きかけてみましょう。また、現在の職場では求めるのをやめて、職場外で満たすというのも一つの方法です。
しかし、あまりにもギャップのある項目が多い、また、ギャップの数字が大きい(-3~-5)、すでにストレスを強く感じているという場合は、今の職場で働き続けることが自分の将来にとって得か損か、よく考えてみてくださいね。

すでに転職を考えているという方は、今回の結果を踏まえて転職先を探したり、コーディネーターに相談するなどしてみてください。あなたが働くうえで大切にしたいことが得られる職場が見つかることを願っています。


≪心理カウンセラープロフィール≫

松本 いずみ
公認心理師。明治学院大学大学院心理学専攻修士課程修了。ストレスチェック実施者研修修了。スクールカウンセラーとして都内中高で12年間従事するかたわら、メンタルヘルスサイトにて一般向けに心理学コラムの執筆とメールカウンセリングを担当。プライベートでは0歳と7歳の2児の母。最近は「あつまれどうぶつの森」を家族で楽しんでいます。

参考

北野唯我、百田ちなこ
これからの生き方。自分はこのままでいいのか?問い直すときに読む本

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