新人の育成で早い時期から気を付けたいこと

新年度が始まり、あなたの園にも、きっと新しい保育士さんが何人か入職されたことと思います。
4月だけでなく、園によっては様々なタイミングで、新しい保育士さんが増えることがあります。最近は、自分より年上の新人さんや、復職した経験者、転職してきたベテランの人、臨時職員の人など、様々な年齢と職歴を持つ人がいます。
そういった様々な新人さんに対して、どのように指導やコミュニケーションをすれば良いのか、迷うこともあるかもしれません。
今回は、そのように新しく職員が入ってきた時、どのようにサポートしていけば良いのかについて、相手の年齢や経験を問わずに活用できるコツを見ていきます。

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まずは関係づくりから

一番大切なのは、何と言っても関係づくりです。と言っても、友達のように仲良くするということではありません。お互いが、どういう人間なのか、伝え合い、理解し合うということが大切です。
例えば、次のようなことをしてみましょう。

雑談をする

何気ない会話をしてみましょう。最初は天気や季節など無難な話題で大丈夫です。在園児の可愛らしい成長エピソードなども、情報共有を兼ねられていいかもしれませんね。

雑談は意味のないことに思われがちですが、実際には仕事を円滑にしてくれるコミュニケーションです。話したことがない先輩よりも、話したことのある先輩からのアドバイスの方が受け入れやすいですよね。是非、何気ない雑談をしてみてください。

自己開示をする

自己開示とは、自分について話すことです。趣味や好きなもの、ドラマ・音楽など、プライベートの話をすることで、人となりを伝えることができ、「この人は、優しそう」「困った時に相談に乗ってくれそう」という和やかな雰囲気を伝えることができます。
もしも、職場でプライベートについて話すことに抵抗がという場合は、無理に話す必要はありません。仕事関連の話で充分です。例えば、「今の園は何年目か」「去年は何歳のクラスを担当していたか」などを、話題にしてみましょう。 新卒の新人さんには、過去の失敗話をしておくと、「先輩にもそんな時期があったのか」と、共感が得られ、相談してもらいやすくなります。また、本人が今後の自分の成長に期待が持てるようになったり、ミスの予防につながったりもします。
ただし、無理やり相手のプライベートを聞き出さないこと。あなたから自己開示をすることで、相手も自然に自分のことを話してくれるようになるので、それを待ちましょう。


得意なことを見つける

得意なことが見えて来ると、何をメインで担当してもらえば、園全体としてスムーズにいくのかなどがわかっていきます。次のことを試してみてください。

良いところ探しをする

新人さん、一人ひとりの良いところを探してみましょう。
「A先生は、いつも笑顔だな」
「B先生は、小さい年齢の子の保育が上手だな」
「C先生は、給食を食べさせるのがうまいな」
「D先生は、制作のアイディアが豊富だな」
「E先生は、手遊びに誘うのが上手だな」
…など、保育のスキルや普段の対応などで素敵なところを見つけてみましょう。
力不足を感じていて、困ったなと思うこともまだあるかもしれませんが、良いところを探そうとしてみると、好意的に相手をとらえることができるようになっていきます。

良いところを、すかさず褒める

良いところが見つかったら、褒めましょう。褒めることで、望ましい行動、求められている行動だということが相手に伝わります。人は、してはいけないことを伝えるよりも、望ましい行動を伝えたほうが、自己肯定感やモチベーション、その行動を継続にしてくれる可能性が上がり、自信をもって行動を変化させやすいのです。
また、誰かが褒めていたのを耳にしたら、それを伝えてあげるとさらに効果的です。
「主任が率先して動いてくれるから助かるって褒めていたよ」
「園長先生が、〇〇先生はいつも仕事が丁寧だって褒めていたよ」
…などと伝えてみましょう。
注意したり、厳しく指導したりするよりも効果的で、お互い気持ちよく仕事することができます。
特に新卒の新人保育士さんは自信を持てるまで時間がかかるので、マメに褒めてみてください。

褒めるのが苦手な人は、行動を褒める(〜〜してくれたのが助かった など)、過程を褒める(頑張って準備してくれてありがとう など)ことを意識してみると、かける言葉が見つけやすいかもしれません。「ありがとう」と言うだけでも、望ましい行動だったということは伝わります。


認識にズレがある可能性を考える

新人さんが「わかりました」と答えたので、分かっていると思って伝えたのに、全然違うことをされていた…なんてことがあるかもしれません。その時に、一方的に新人のせいにしていないでしょうか?もしかすると、お互いの認識にズレが起こっていたかもしれません。

指示はなるべく具体的に

「折り紙を、明日までに用意しておいてね」と言われた時、あなたはいつの何時までに用意をしますか?今日の退勤時間まで?それとも翌日の出勤時間まで?翌日の午前中?それとも、翌日の退勤時間まででしょうか。手が空いたらすぐという人もいるかもしれませんね。

指示された言葉には、具体的な時間や日付がなく、期限がはっきりしません。こういった時、取り違えのミスは起こりがちです。
もしも、「普通の折り紙と、和柄の折り紙を明日の製作で使いたいので、明日の10時までに2セットずつ用意して、この箱に入れておいて」と具体的に言われていたら、ミスはかなり防げるということがお分かりいただけるでしょう。そして、この例だと置き場所も分かっているので、翌日の動きもスムーズにいきそうですよね。
指示はなるべく具体的に、期限については時間も明確に伝えるようにしましょう。

常識と思っていることでも具体的に

「普通こうでしょ」と思っている常識が、通用しない可能性があります。それはあくまで園内での常識かもしれません。当たり前のことでも、具体的に指示をすることが大切です。

例えば、「給食後のエプロンは、汚れ物袋に入れておいてね」と指示をされた時、あなたならどうしますか? そのまま袋に入れますか?ゴミを取り除きますか?お水でゆすぎますか?
どのパターンもあり得ます。あなたにとっての常識は、相手の常識とズレがあるかもしれません。転職してきた先生は、こういった片付けは特に質問するところでもないので、実は対応にずれがあったということがかなり経ってから発覚するかもしれません。
常識で今更教えるまでもないと思えることでも、最初のうちに具体的に伝えておきましょう。

どこから本人がすべきか伝える

初めはすべて教えることから始まりますが、いつまでも育成に時間をかけてはいられませんよね。しかし、新人さんからすると、いつから自分で対応すればいいのか、分からないことも。
例えば、「毎月の成長記録は、この冊子に記録していきます」と教えてもらった後、それはいつから自分が担当する仕事なのか伝わっていない場合があります。とっくに終わっていると思っていた仕事が、就業間際に終わっていないことに気づいて大慌てということもあるかもしれませんね。
「来月からはお願いね」「残りは各担任が準備してくださいね」など、ここからはあなたの仕事であるということが伝わるような声掛けをしてみてください。


どんな相手であっても敬意を払う

冒頭で、新人さんの年齢や職歴は様々ということをお伝えしましたが、当然のことながら、どのような相手に対しても敬意を払うことが大切です。若い新人でも下に見ない、職歴の長い人やブランクのある人に対しては過去の経験を尊重するようにしましょう。


これだけは絶対NG!!

人格や性格について叱る

大きなミスが起こった時、起こりそうだった時など、新人さんを叱らなければいけないこともあるかもしれません。その場合、どういったことに気を付ければいいのでしょう。
それは決して、相手の人格や性格をけなさないことです。相手の人格について否定することはモラハラです。
例えば「そういう性格だからダメなんだ」「あなたはいつもダメね」「ほんと、考え方が甘いよね」など。
叱るのは必ず「行動」に限定してください。具体的にどういった行動が望ましくなかったのか、危険だったのか、どのような行動によって改善されるのかなどを伝えましょう。

ほかの人と比較する

「同期の〇〇先生はできるのに」…ついこんな風にぼやいてしまうことがないでしょうか。
もっと頑張ってほしいという気持ちからくる言葉かもしれませんが、そんな風に言われて頑張ろうと思える人は稀です。モチベーションが下がり、仕事を頑張りたい気持ちはどんどん減っていってしまうでしょう。
あくまで個人の成長や達成度に目を向けることを忘れないように気を付けましょう。


おわりに

いかがでしたか?新人保育士さんとの関わりのコツについて、ご理解が深まったでしょうか。
こういった関わりをしていると、この人は何ができ、何を教えておく必要があるのか、少しずつわかっていきます。基本的に全員が受ける研修はあると思いますが、それ以外で気にかけておくと良さそうなポイントが見えてくるのです。
例えば、他の園で経験のある新人さんの場合は、基本的な保育については知識も技術も十分あるため教える必要はありません。しかし、園独自のシステム(ICT連絡帳の記入の仕方や書いてほしいこと、登降園時の支度など)については、伝える必要がありますよね。

育てる側は大変なことが多いですが、いずれあなた自身の仕事や園全体の動きがスムーズになっていくために、是非、できそうなことから意識して取り組まれてください。


≪心理カウンセラープロフィール≫

松本 いずみ

公認心理師。明治学院大学大学院心理学専攻修士課程修了。ストレスチェック実施者研修修了。スクールカウンセラーとして都内中高で12年間従事するかたわら、メンタルヘルスサイトにて一般向けに心理学コラムの執筆とメールカウンセリングを担当。プライベートでは0歳と7歳の2児の母。最近は「あつまれどうぶつの森」を家族で楽しんでいます。


参考

秋元岳内 30代社会人が悩む新人教育を解決する3つの方法

飯野謙次 仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか? 文響社

石田淳 マンガでよくわかる教える技術 かんき出版

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