同僚は発達障害かも?と思ったら1〜理解と連携のコツ(ADHD編)〜

同僚と一緒に働いている中で、こういった経験がないでしょうか?
・一生懸命やっているように見えるのに、何度注意しても同じミスを繰り返す
・特定の作業が極端に苦手
・提出期限を守れない
こういった事が度々起こると、「もしかして、発達障害かも?」と思うことがあるかもしれません。

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お互いにたまるストレス

同僚に発達障害の傾向があると、仕事がスムーズにいかないことも、しばしばですよね。
特に本人が自覚していない場合はどう働きかけていいものか分からず、結果、周囲のストレスが溜まっていってしまうことが多々あるでしょう。

また、本人も頑張りたいのに上手くいかず、自信を失う、何度も叱られるなどして、うつ病や適応障害などになってしまうこともあります。

この状況をそのままにしておくのは、お互いにとって、そして、園児たちにとっても良いこととは言えません。

今回はこのような時に、どう理解し、どのような工夫をすればスムーズに共に働いていけるのか、考えていきましょう。中でもADHDが疑われる場合について詳しく見ていきます。


目次


発達障害の理解のポイント

グレーゾーンとは

誤解されやすいこと


ADHDの理解のポイント

こんなことが得意

こんなことが苦手


解決方法を見つけるための3ステップ


発達障害の理解のポイント

保育士や幼稚園教諭のカリキュラムで、発達障害については学んでこられたかと思いますが、まず、基礎情報としておさらいしておきましょう。


―引用―

発達障害とは、発達障害者支援法において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。
(文部科学省HP https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm

――――


専門医による様々な検査や生活の様子の聞き取り、観察などに基づき診断されます。


理解のポイント

脳機能の障害であり、本人の意志で症状を抑えるのは困難
・生まれつきのもので、保護者の育て方だけの問題ではない
通常低年齢に生じるもの
・成人になってから生じることはないが、成人になってから気付くことがある
という点をおさえておきましょう。


グレーゾーン

障害の傾向は少あるけれど、診断が出る程ではない範囲を、グレーゾーンと呼んでいます。職場で同僚として出会うとしたら、グレーゾーンの方か、診断が出ていて薬物療法などにより症状を緩和している方でしょう。

最近は幼い頃に診断されていたり、検査などによって自分の傾向を知っていたりということが多いです。大人になってから自分で専門医に相談したという人も増えてきています。

しかし、中には、小さい頃から、「上手くいかないな…」「どうして皆と同じようにできないのだろう?」と思いながらも何とか乗り越えてきて、今まで相談したり、検査を受けたりしていない人も、まだたくさんいます。そのように、家族が手伝ってくれたり、自力で頑張ってきたりしていた人たちが、就職してはじめて、うまくいかないことに直面する場合も多いのです。


誤解されやすいこと

発達障害を持っていても、最初のうちは気づかれないので、余計に本人の困難さは伝わりづらいものです。そのため、誤解されることも多いです。
例えば、
・やる気がない
・指示に不満があるからやらない
・不真面目
・口だけ
・さぼっている
…など、周囲はこのように感じやすいようです。
同僚に対して、正直、このように感じた人もいるのではないでしょうか?
改善策も見つからず、ストレスが溜まっていく一方では、そう感じてしまうのも無理はないかもしれません。

ただ、先ほどお伝えした、本人の意思で症状を抑えるのは困難であるということを知っていただき、この後に取り上げていく対処法を知ることができたなら、これらの誤解は、今後は起こらず、どうすれば解決していけるのか、考えていくことができるようになるでしょう。

では、ADHDについて見ていきます。


注意欠陥/多動性障害(ADHD)の理解のポイント

最新の診断基準(DSM-5)ではADHDは注意欠如/多動症と翻訳されています。


―引用―

ADHDの診断については、アメリカ精神医学会(APA)のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)に記述されており、下記などの条件が全て満たされたときにADHDと診断されます。
1.「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
2.症状のいくつかが12歳以前より認められること
3.2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
4.発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
5.その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと
(e-ヘルスネットより https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html )

――――


理解のポイント

「不注意」「多動・衝動性」を主な特徴とする
どんなに集中しようと思っていても維持が難しく、気が散ってしまう
・細かい部分に注意を払うことが難しく、気を付けていても見落としてしまう
・年齢に対して落ち着きを維持することが難しい
・じっとしていられず、衝動的な行動をとってしまいがち
これらは、どんなに努力しても、本人の意思に反してコントロールが困難で、日常生活(仕事・プライベート)に支障が起こる状況にある。
という点をおさえておきましょう。


こんなことが得意


・短時間で終わる仕事
瞬発力があるので、集中力が保てる範囲の短時間の作業を任せてみてください。各クラスに書類を配る・連絡する、行事で物を運搬するなど、素早く対応してくれるでしょう。

・色んなアイディアを出すことが求められる仕事
頭の中で、絶えず様々な考えやアイディアがわいています。状況にそぐわない内容もあるかもしれませんが、とにかくたくさんアイディアが欲しい時には任せてみてください。

・体を動かす仕事
身体を動かすことが好きな人が多いです。園児たちと外遊びやダンスをする時には、活躍してくれるでしょう。

・見通しの立つ仕事
単純で、段取りや終わりが分かりやすい作業は、取り組みやすいです。


こんなことが苦手


・一度に色んなことをやらなければならない業務(マルチタスク)
同時進行が苦手です。例えば、制作をするなら、@紙を切る(10枚)Aのりで貼る(10枚)など、手順ごと、少量ずつ作業するようにするとスムーズになります。

・長時間の集中が必要な業務
気が散ってしまうので向きませんが、10分やったら休憩、5個やったら次に移るなど、区切りをつけて次の作業に移るようにすると、スムーズになります。

・危険な作業
不注意により、ミスを起こしがちです。園児の命に関わったり、事故が起こったりしそうなことは数名で担当するようにしましょう。また、担当範囲を小さくすると、ミスを防ぎやすくなります。


解決方法を見つけるための3ステップ

つい、障害名や診断が下りているかを重視しがちですが、実は共に働くうえでは診断はそこまで重要ではありません。

大切なのは「今、現在、本人周囲が困っていること」に対して、
1.何が起こっているのか
2.どう困っているのか
3.どうすればそれは解決できるのか
ということを整理し、解決方法を見つけることです。

例えば、
「必要な書類を何度も忘れてきて、提出できていない」
1.何が起こっているのかー自宅の机に忘れてきてしまう
2.どう困っているのかー同様のことを3回繰り返していて、提出期限が過ぎそう
3.どうすればそれは解決できるのか
 案1 職場で書く
 案2 自宅に着くころにアラームをセットし、鳴ったらすぐカバンに入れる
 案3 上司からカバンに入れたか確認の連絡を入れる
…など。

これは一例ですが、このような解決方法を考える上では、先ほどあげたような障害特有の得意なことや、苦手なことを知ることが、カギになっていきます。


本当は誰にとってもスムーズになる方法

さて、問題解決のための3ステップに即して例を見てみましたが、「こんな簡単な工夫で良いの?」と思った人もいれば、「わざわざその人のためにやるのは大変」と思った人もいるかもしれません。

しかし、よく考えてみると、「これって、誰にとっても作業がしやすくなる工夫なのでは…?」ということに気づかれませんでしたか?

実はその通りで、このような工夫は、誰にとっても助かる、業務・体制の強化・向上につながる対応です。発達障害をもつ職員がいようといまいと、園内でスムーズにいっていないことがあれば、このように工夫を考えていくことで、働きやすい職場づくりにつながっていきます。

さて、あなたが今現在困っていることに対する解決方法が見えてきたでしょうか?
理解は深まったものの、なかなか具体案までは思いつかないかもしれませんね。
ご安心ください。次回は、具体的なシチュエーションでの対処例をたくさんお伝えしていきます。

★次の記事はこちら
同僚は発達障害かも?と思ったら2〜シチュエーション別対処法(ADHD編)〜


≪心理カウンセラープロフィール≫

松本 いずみ

公認心理師。明治学院大学大学院心理学専攻修士課程修了。ストレスチェック実施者研修修了。スクールカウンセラーとして都内中高で12年間従事するかたわら、メンタルヘルスサイトにて一般向けに心理学コラムの執筆とメールカウンセリングを担当。プライベートでは0歳と7歳の2児の母。最近は「あつまれどうぶつの森」を家族で楽しんでいます。

参考

佐藤 恵美 もし部下が発達障害だったら

榊原洋一・佐藤曉 発達障害のある子のサポートブック

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