燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)にご注意2

前回は燃え尽き症候群の傾向についてチェックリストとともに、症状について見ていきました。今回は、どうすれば燃え尽き症候群を予防することができ、また、なった場合、どのように乗り越えていけば良いのかについて、考えていきます。

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予防のポイントは自分自身と職務上の役割とを、ハッキリ分けること

前回、燃え尽き症候群は情緒的な消耗によって引き起こされるということをお伝えしました。
そのため、燃え尽き症候群を予防するには、プライベートと仕事を分け、園児や保護者、同僚とのメンタル的な距離感に気を付けることが大切になっていきます。
具体的な例で見ていきましょう。


▼前回の記事はこちら
燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)にご注意1


・園児たちが個人的な課題を解決できないのを、自分の人格のせいにしない。

→ケンカになりやすい子、制作や集団行動に取り組みにくい子、生活面の習慣が身に付きづらい子など、様々な課題を抱えている園児がいますよね。そのことに対し、自分の指導が行き届いていないせいだと、責任を感じてしまうことがあるかもしれません。
ただ、どの園児も成長過程にあり、成長のペースはそれぞれです。ゆっくり目の子も、よく見るとほんの少しずつかもしれませんが、成長していっています。ご自分を責めず、引き続き長い目で見守りましょう。また、どう対応すればより成長の支援になるのか、一人で抱え込まずに上司や同僚に相談してみるのもよいでしょう。


・相手の機嫌が直らないことを、自分の人格や対応のせいにしない。

→園児や保護者、同僚との人間関係がこじれることもあるかもしれません。たとえ、可能な限り適切な対応を行ったとしても、相手の気持ちがおさまらないということはあります。そういった場合は、相手の個人的な問題なので、過度にご自分を責めなくても大丈夫です。また、丁寧すぎる対応はかえって相手が要求をエスカレートさせることもあります。距離を取り、無理なくできる範囲の通常の対応を続けましょう。


・園児の機嫌に引っ張られそうになっていると気づいたら、こころの距離感を保つ。

→保育士も人間ですから、時として園児の感情に飲み込まれ、冷静に対応できないようなことは起こり得ます。そういった場合は、相手と距離を取ることが大切です。ただ、園児を放っておくことはできませんから、対応に難しさがあることを上司や同僚に相談し、補助に入ってもらうようにしましょう。


・仕事が順調に進まない、上手くいかないことを、自分の人格のせいにしない。

→「自分だけが仕事をこなしきれていない」と感じることがあるかもしれません。しかし、細かく見ると、あなたに割り振られた作業は、質と量を見た時に同僚よりも負担が大きくなっているという場合があります。また、保育士の業務は多岐にわたるため得意不得意によって、業務ごとに負担感が異なる場合もあります。こなすのが難しいと感じたら、早めに上司や同僚に相談し、作業を再分担してもらう、補助に入ってもらうなどしましょう。


・出勤前や退勤後、休日に、仕事のことを考えない。

→仕事とプライベートを切り離し、バランスを保つことが大切です。休日は仕事とは切り離して、好きなことをして過ごしましょう。保育士の仕事を生きがいに感じ、自己研鑽をされるのは良いのですが、「職場での具体的な仕事」や「個別の園児」については、プライベートの時間にはなるべく考えないようにしましょう。どうしても考えてしまうという人は、読書、映画鑑賞、音楽鑑賞、ハンドメイド、スポーツ、ゲームなど、考え事ができない趣味に取り組むことがお勧めです。残業をすることも控え、なるべくプライベートの時間を持ちましょう。


すでに燃え尽きの状態になっていると気づいた場合は…?

前回のチェックリストは簡易的なものではありますが、A・Bの両方がほぼ当てはまるという場合は、すでに燃え尽き症候群になっている可能性が高くなります。そういった場合は、どうすればいいのでしょうか?


(1)こころと身体を休ませる

まず、仕事と距離を置き、こころと身体を休ませることが大切です。心療内科や精神科を受診し、心的な疲労により休養の必要があるかどうかアドバイスをもらってください。そして、休養の必要があると言われた場合は上司に相談し、ある程度まとまった期間、仕事をお休みさせてもらいましょう。必要に応じて診断書などを書いてもらうと理解を得やすいでしょう。
仕事を休むのは抵抗が大きいとは思いますが、無理し続けることは、あなた自身の為にも、そして、保育を受ける園児たちのためにも良いこととは言えません。


(2)仕事に対する価値観を振り返る

燃え尽き症候群になる人の多くは、プライベートと仕事とのバランスが崩れ、仕事の側に極端に偏っていることが多いです。そのため、仕事と切り離した自分が、何を大切にしていきたいかを考えることが大切です。
また、仕事に対しても、これからどのように働いていきたいのか、何を大切にしていきたいのか、自分に問い直してみましょう。これまでの働き方をある意味で否定することにもなりかねませんが、これまで通りでは支障があるということです。心身ともに健康に働いていくために、価値観を改めることは大切です。


(3)自分の新しい価値観に合う職場を見つける

仕事に対する価値観を振り返り、新たな価値観を得ることができたら、次にそれ合った職場を見つけましょう。多くの場合は違う園に再就職しているようですが、まずは、今の園でも行えないかどうか検討してみると良いでしょう。
同じ保育士という仕事でも、園によって働き方や、求められること、できることはずいぶん異なります。自分で見つけるのが難しい場合は、保育士専門のキャリアコンサルタントや転職サイトなどを活用してみてください。
また、保育士とは別の選択肢を選ぶという場合もあるでしょう。


心身ともに健康に働くために

燃え尽き症候群についてご理解を深めていただくことはできましたか?
今は燃え尽き症候群の傾向がない人も、これからも仕事とプライベートの境界線やバランスを大切にして、燃え尽きを予防していってください。

もしも、ご同僚にこのような状態の人がいれば、本人を傷つけないよう配慮しつつ、情報提供をしていただければと思います。



≪心理カウンセラープロフィール≫

松本 いずみ

公認心理師。明治学院大学大学院心理学専攻修士課程修了。ストレスチェック実施者研修修了。スクールカウンセラーとして都内中高で12年間従事するかたわら、メンタルヘルスサイトにて一般向けに心理学コラムの執筆とメールカウンセリングを担当。プライベートでは0歳と7歳の2児の母。最近は「あつまれどうぶつの森」を家族で楽しんでいます。

参考

厚生労働省 e-ヘルスネット

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-047.html


久保 真人

2007 バーンアウト(燃え尽き症候群)—ヒューマンサービス職のストレス 日本労働研究雑誌

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