保育園での熱中症対策で気をつけることは?症状・対処方法を解説。
- 保育士お役立ち情報
- 2022/07/16
毎年夏になると、熱中症リスクが高まります。特に幼児は熱中症になりやすいので、保育園では注意が必要です。更に、新型コロナウィルス感染予防でマスクをつけると、リスクはもっと高まります。熱中症の原因や症状、子どもたちを熱中症から守るための基礎知識、注意点などを紹介します。
熱中症はなぜ起こる?
体温上昇に対してバランスが崩れ、体内に熱がたまるため
暑い夏、保育園でも熱中症のリスクがぐんと高まります。乳幼児は体温調節機能が完全ではないため、熱中症になりやすく重症の場合は死に至ることもあります。保育士としては熱中症のメカニズムを理解して、しっかりと対策をしていきたいですね。
熱中症とは、体温が上昇することで引き起こされる様々な障害のことです。人は運動などで体を動かすと、体内で熱がつくられて体温が上昇します。
平常時であれば、汗をかいたり、体の表面から空気中に熱を逃がすことによって、体温を調節しているので、通常の体温に保たれています。
しかし、高温度の環境で激しい運動など行うと、体内でつくられた熱を外に逃がすことができにくくなります。
さらに、そのような環境下で活動を続けると、体がどんどん熱くなり、汗をかいて体の水分や塩分が減っていきます。体内の血液の流れが悪くなり、体の表面から空気中に熱を逃がすことができなくなっていきます。
そのように、体温上昇と調整機能のバランスが崩れることで、どんどん体に熱がたまってしまい、熱中症になるのです。
熱中症の症状は?
めまい、けいれん、頭痛などの症状
熱中症の具体的な症状にはどんなものがあるのでしょうか。熱中症では、主に体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状が起こります。
その重症度によって、次の3つの段階に分けられます。
T度(軽度)
「現場での応急処置で対応できる軽症」
・立ちくらみ(脳への血流が瞬間的に不十分になったことで生じる)
・筋肉痛、筋肉の硬直(発汗に伴う塩分の不足で生じるこむら返り)
・大量の発汗
U度(中度)
「病院への搬送を必要とする中等症」
・頭痛
・気分の不快
・吐き気、嘔吐
・倦怠感、虚脱感
V度(重度)
「入院して集中治療の必要性のある重症」
・意識障害
・けいれん
・手足の運動障害
・高体温(体に触ると熱い)
立ちくらみ、筋肉のこむら返り、ぐったりする、呼びかけへの反応がおかしい、けいれんがある、まっすぐに歩けない、体が熱いなどの症状がみられた時には、すぐに熱中症を疑いましょう。
子どもの場合、自分の体調を伝えたりすることが難しい場合も多いです。暑い季節は特に子どもの様子に気を付けましょう。
子どもは熱中症になりやすい!?
自分自身での暑さ予防が難しい!
子どもは自分で水分を補給したり、服を脱ぐなどの暑さ対策がしにくいです。また、子どもは地面に近いので、照り返しの影響を強く受けます。大人の顔の高さで32度の時、子どもの顔の高さでは35度くらいあるそうです。
言葉を話せない幼い子は、暑いと伝えることもできません。マスクを着用している場合は、更に熱中症にかかりやすくなります。マスクを着けていると口の周りの温度は5〜10度高くなり、熱中症リスクが高まります。口の中が乾燥しにくいので水分補給したくなくなり、脱水を進めてしまうのです。
新型コロナウィルス感染予防で子どもたちがマスクを着けている園では、熱中症対策も含めて、園全体で方針を考えていく必要があります。
もしも熱中症になったら?対処方法は?
まずは水分補給し体を冷やす
熱中症の症状が見られた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
自分で「のどが渇いた」と水分補給できるようであれば、すぐに水分を摂って涼しいところに寝かせて、ゆっくり休息させましょう。
他に、熱中症の応急処置は、以下になります。
・太い血管のあるわきの下や首などを氷で冷やす。
・冷たい濡れタオルで身体を拭く。
・うちわ、扇風機風などで風を送る。
問いかけに答えられないほど意識がしっかりしない場合には、すぐに受診が必要です。救急車を呼ぶ目安は以下のように考えましょう。
・意識障害がある。
・全身がけいれんする。
・体温が40度以上ある。
・汗が出なくなる。
保育園で熱中症にならないための対策は?
涼しい服装、帽子を被るなど
保育園での熱中症対策の具体例を紹介します。
涼しい服装をする
子どもたちには、通気性の良い涼しい服を着せるようにしましょう。
保護者には、夏が近づいてきたらお着替えも含めて、麻や綿素材などの涼しい服装にしてもらうようにお願いします。また、暑さに応じて脱ぎ着できるように、子どもたちには日頃から話していきましょう。
日陰を利用する
炎天下での屋外遊びは、無理のない範囲で行うのが基本です。
幼児は照り返しの影響を大人よりも大きく受けます。屋外で遊ぶ場合は、こまめに日陰や屋内で休憩しながら遊ぶようにしましょう。
帽子をかぶる
帽子をかぶることで、日光が頭に直接あたらなくなり、頭の温度が上昇するのを防ぎます。基本的なことですが、外で遊ぶ際は必ず帽子をかぶらせましょう。
水分補給をする
水分補給は、熱中症予防の基本です。こまめな水分補給は必ず行いましょう。
注意したいのが、本人が「のどが渇いた」と感じた時には、もうすでにかなり水分が失われているということです。そのため、のどが渇く前に、保育士は少しずつ子どもに水分と塩分を補給することが重要になってきます。子どもが「のど乾いていない」と言うから飲ませなかった、というのはNGです。
子どもの顔色や汗のかき方を観察する
高温の屋外にいる場合は、いつもより子どもたちの様子に気を配ってください。特に「気分が悪い、顔が赤い、ひどく汗をかいている」などが見られた場合は、涼しい場所に連れていき休息を取らせましょう。
乳幼児の場合、まず顔色を見ましょう。おむつに出ているおしっこの色を確かめ、濃くなっていないかチェックします。濃くなっているようだったら水分不足です。また「唇が乾いていないか、汗がしっかり出ているか」も確かめましょう。
徐々に体を暑さに慣らす
熱中症は、梅雨の合間など、体がまだ暑さに慣れていない時に起こりやすいものです。
そのため、子どもたちが徐々に暑さに慣れていくようにしていくことが大切です。
5〜6月頃から意識して運動をして、汗をかくことに慣れさせていきましょう。
保育士自身が気をつけるポイントは?
水分・塩分補給は怠らない!
子どもたちのケアに頭がいっぱいで、保育士自身の熱中症対策が後回しになることがあります。以下のようなポイントに気を付けて、保育士も熱中症対策をしていきましょう。
・水分補給を怠らない
・塩分補給をする
・濡れタオル、冷感タオルなどを首に巻く
・冷却スプレーを使う
・屋外ではマスクは適度に外す
・生活習慣に気を付ける
新型コロナ対策で日常的にマスクを着けていますが、熱中症リスクも高くなるので、屋外では、状況を見ながら外しましょう。厚生労働省の指示でも、屋外でマスク着用を推奨するのは、「他者と身体的距離(2m以上を目安)が確保できない中で会話を行う場合」のみです。
また、意外と抜けてしまいがちですが、きちんと食事をとり、寝不足をしないなど、生活習慣に気を付けることで、熱中症にかかりにくくなります。
まとめ
猛暑日が多くなったため、毎年、熱中症は増加傾向にあります。乳幼児の熱中症も多くなり、それが原因で亡くなる子も毎年増えています。
熱中症は、保育士の予防で防ぐことができます。熱中症に対する理解を深めて、万全の対策をしていきましょう。
ライタープロフィール
玉田 洋さん
保育園運営企業で、子育て雑誌編集長を経験し、その後、都内で保育士として勤務する。現在は「森の保育園」を計画中。
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