発達が気になる子への支援方法・注意点は?
- 保育士お役立ち情報
- 2020/03/26
発達が気になる子にどう接していくかは、デリケートな問題です。保育士ができる支援のあり方について考えました。
発達が気になる子が増えている?
『自閉症スペクトラム障害』などの児童が増えている!
最近、保育の現場で、発達が気になる子の増加を実感している保育士が多いようです。実際にはどうなのでしょうか。
例えば自閉症ですが、70年代には、その数は人口1万人あたり4〜5人程度とされていました。現在、自閉症スペクトラム障害は、児童100人あたり約1人の障害だと言われています。
よって、保育士にとって発達が気になる子の保育は、以前よりずっと身近な問題になってきています。
「自閉症スペクトラム障害」という概念は2013年に登場し、発達障害の範囲が拡大したということも関係していることは知っておきましょう。
そもそも発達障害とは?
脳機能の発達遅れにより社会生活に支障がある状態のこと!
発達が気になる子について考える上で、まずは発達障害についてきちんと知っておく必要があります。尚、発達障害はデリケートなテーマなので、あやふやな知識や憶測でものを言うことは避けましょう。
そもそも発達障害とは、一般に「脳機能の発達のアンバランスさが原因で、発達の全般的な遅れや部分的な遅れ、偏りがあり、社会生活に支障がある状態」のことを言います。発達障害は、大きくASD(自閉症スペクトラム)・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・LD(学習障害)の3つのタイプに分けられます。
@ASD(自閉症スペクトラム):
人の気持ちを想像、理解するのが苦手。
AADHD(注意欠陥・多動性障害):
多動や不注意といった様子が目立つ。
BLD(学習障害):
読む、書く、計算するなど特定の分野の学習に著しい困難がある状態。
3つのタイプがありますが、障害のタイプを明確に診断することは実は難しいようです。なぜなら、その子によって障害の特徴がそれぞれ少しずつ重なり合っている場合も多いためです。
一つ注意したい点ですが、保育士は子どもを見て「この子は発達障害だ」と、決して診断してはいけません。障害の診断ができるのは、医師のみだと認識しておく必要があります。
発達が気になる子どもへの関わり方について
発達が気になる子への関わりは、保育士一人の問題ではなく職員全体で考えなければいけない問題です。専門家の指導も受けながら関わり方を考えて、園全体で共有していく必要があります。
以下は、医師や発達障害の子どもに深く関わる専門家が心掛けているポイントなので、園で検討する際の参考にしてください。
困った状況が起こる理由を把握し、環境づくりをする!
発達障害の誤解の一つに「その子に障害があるから、困った状況が起きる」というものがあります。ただ、医学的な見地からは、障害は「個人要因」だけで生じるのではなく、「環境要因」との相互作用により生じるとされています。つまり、環境づくりが最も重要なのです。
保育士は「○○ちゃんには障害があるから」など、子どもの特性に原因を求めるのではなく、どうして困った状況が起きるのか、どうしたら防げるのかをまず考えてください。例えば、園内でのお約束を理解しにくい子には、すぐに思い出せるように保育室内に掲示物を貼る、忘れっぽい子にはチェックリストを用意するなどが考えられます。
苦手な部分をフォローするツールを作るなどして、環境を整えてあげることが重要です。
叱らずに褒めて評価する!
例えばADHDの子どもの場合には、行動を制御できるようにサポートしてあげることが求められています。そのためには、保育士は「できないこと」を叱らずに、「できたこと」を一つひとつその場で褒めてあげることが重要です。
発達が気になる子は「褒めて評価する」ことが原則なので、日常生活の中でよいところを常に探してあげましょう。
例えば、お友達に優しくできた時、「今日はお友達と仲良く過ごせているね」など保育士が心から褒めることで、必ず伝わります。逆に、叱られて自己肯定感が下がってしまうと、二次障害を起こしてしまうこともあるので、気を付けましょう。
子どもとは「対話する」ことを心がける!
発達が気になる子と話す場合は、子どもの状況を知るためにもこちらが一方的に話すのではなく、子どもと向き合って対話する姿勢を心がけてください。
以下のような話し方が有効です。
・赤ちゃんをあやすように、子どもの顔を見ながら穏やかに話す。
・ゆっくり、はっきりと、トーンを落として話す。
保育士はできるだけ穏やかに話して、子どもが緊張することなく受け答えができるようにしてください。
まとめ
「障害は環境を変えることで、障害でなくなる」という言葉もあるようです。私も経験ありますが、お友達とのトラブルが多かった子が保育環境の変化で大きく変わっていく様子を目にしました。発達が気になる子に対しては、その子自身に原因を求めずに、関わり方や環境づくりを工夫していくことが大切です。
ライタープロフィール
玉田 洋さん
保育園運営企業で、子育て雑誌編集長を経験し、その後、都内で保育士として勤務する。現在は「森の保育園」を計画中。
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