保育士の人材不足が解消されない理由は? 国や保育園側の対策についても紹介します
- 保育士お役立ち情報
- 2020/03/26
保育士不足は深刻な問題であり、保育業界に限らず社会的な問題にもなっています。ここでは、なぜ保育士不足が起きているのか、国や保育園側が行っている解決策について紹介します。また、今後の保育士の将来性や活躍の場についても触れていきます。
保育士の人材不足が解消されない理由は?
今、待機児童問題を背景として、保育士不足が社会的に大きな問題になっています。
保育を担う人材の不足は深刻な問題で、マスメディアでも多く取り上げられるようになっています。
そもそも、保育士はどうして不足しているのでしょうか。国や保育園は、どのような解決策を行っているのでしょうか。
これからの保育士の将来性や活躍の場についてもあわせてご紹介します。
そもそも、保育士の人材は不足している!?
保育士不足は社会的にも深刻な問題
平成26年度に厚生労働省は『保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて』のなかで、平成29年度の国内で必要な保育士の数を試算しています。そこで必要とされた保育士の数は約46万人。
ところが、実際の推計では、毎年保育施設に就職する保育士は約38万6千人。
したがって、年間約7万4千人の保育士が不足している計算になります。
保育士が不足することで生じる深刻な問題のひとつは、待機児童の問題です。
人手不足になった保育園では、受け入れる子どもの数も増やすことができません。
保育士の人材不足はなぜ起こるの?
保育資格を取得しても保育士になりたがらない
保育士の人材が不足してしまう背景には、保育士資格を取得しても、およそ半数が保育園への就職を希望しないことが挙げられます。「保育士資格をもちながら保育士になりたくない理由」として、次のような理由(複数回答)があげられています。
1.賃金が希望と合わない(47.5%)
2.他職種への興味(43.1%)
3.責任の重さ・自己への不安(40.0%)
4.自身の健康・体力への不安(39.1%)
5.休暇が少ない・休暇がとりにくい(37.0%)
(出典:厚生労働省「保育をさせる保育士の確保に向けた総合的取組」(平成25年10月)より)
賃金や休暇の少なさなど、労働条件の問題が多く挙げられています。
また、責任の重さや健康・体力面への不安も、保育士として働く上では大きな障害になっているのが現状です。
このように労働環境や条件に不安を感じれば、他職種に魅力を感じてしまうのも無理はありません。
退職後に保育士として戻らない『潜在保育士』も増えている
また、いったんは保育士として保育園に勤めながらも、退職して職場に復帰しない「潜在保育士」が増えているという問題もあります。
保育士は早期に離職してしまう人が多く、保育士資格をもちながら保育士として就職を希望しない求職者のうち、半数以上が保育士として5年未満の勤務しか経験していません。
保育士に魅力を感じていったんは就職しても、労働条件や環境の厳しさが一向に改善しないことが、保育士としてのキャリアアップを思いとどまらせているのではないでしょうか。
保育士の人材不足に対して国・行政が実施した対策は?
保育士確保プラン
保育士数の確保のために、国や行政の取り組みも始まっています。
代表的な取り組みの1つが、厚生労働省による「保育士確保プラン」です。
平成27年に発表された「保育士確保プラン」では、保育士試験の年2回実施の推進や処遇改善などの新たな施策などのほか、従来の保育士確保施策についても、@人材育成、A就業継続支援、B再就職支援、C働く職場の環境改善という「4本の柱」の確実な実施を基本とした、保育士確保の取り組みが計画されています。
このプランによって、保育士試験が年2回実施になり、保育士への処遇が改善され、福祉系国家資格(社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士)をもっている人に対して保育士試験科目等の一部免除、離職保育士に対する再就職支援の強化などが実施されるようになりました。
令和2年現在、この取り組みによる成果も着実に出てきてはいますが、依然として待機児童問題の解消は達成されたとは言えません。
保育士確保集中取組キャンペーン
平成31年には「保育士確保集中取組キャンペーン」が実施されました。
これは、国や自治体を挙げて保育士の就業促進を集中的に行い、保育士確保を強力に推進するキャンペーンです。
具体的には、
・保育士の就業を呼びかけるPR活動の実施や、保育士養成学校と連携した呼びかけの強化など
・ハローワークへの求職申込や「保育士・保育園支援センター」への登録の促進
・就職相談会や職場体験・再就職支援セミナー等の開催
・ハローワークの保育士マッチング強化プロジェクト
・保育園に対する積極的な就職あっせんの実施
などです。
これにより、保育士希望者の掘り起こしや就職あっせんが強化されました。
保育士キャリアアップ研修の実施
保育士等キャリアアップ研修は、平成29年度より始まった、保育士の処遇改善のための取り組みの1つです。
保育士のキャリアアップの流れを見通し良く改善し、キャリアアップしやすいよう、目的ごとに指針を定め、研修を実施する制度です。
これまでは、保育士の役職にはクラス担任などの一般の保育士のほか、主任保育士、園長という2つしかありませんでした。しかし、この制度によって新たに「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という役職が設けられました。
役職が増えたことで、若手・中堅の保育士が役職に就きやすくなり、同時に補助金によって処遇も改善されます。保育士等キャリアアップ研修を受けると、これらの新たな役職に就けるようになり、給与が最大月額4万円が増額されます。
保育士の人材不足への保育園の対策は?
給料アップ・人事評価制度の見直し
国や自治体が保育士確保の施策を生み出したとしても、労働環境の改善に直結するとは限りません。
そこで、保育士が働く施設、つまり保育園側の対策も伴わなければなりません。
1つは、給料のアップです。
国や自治体による待遇改善によっても、依然として現場の保育士の納得のいく給与が支払われているとは言えません。離職率を減らすためには、さらなる待遇改善が必要となるでしょう。
もう1つは人事評価制度の見直しです。
あいまいな基準で給与の査定が決まってしまうと、モチベーションが下がったり、職場に対する不信感にもつながります。
現場の保育士がこなしている仕事の量や質を、保育士の納得できる客観的な基準によって評価する必要があるでしょう。
残業時間や勤務時間、休日出勤などの見直し・改善
残業や持ち帰りの仕事、長時間勤務、休日出勤などは見直しや改善が必須です。残業の多くがいわゆるサービス残業とすれば、保育士として働き続ける際には大きな弊害となります。
現在、保育士の約6割が10時間以上の勤務をしていると言われています。長時間労働を緩和するには、保育士の数を増やすのみならず、園の業務全体の整理や見直しをしなければなりません。
保育士が子どもと向き合うことに全力を尽くせるよう、仕事を減らす取り組みが必要不可欠です。
保育士モチベーションアップの仕組みづくり
いずれにしても、大切なのは保育士のモチベーションが上がるように、働きやすい仕組みをつくることです。
給与体系を明確化して従業員に提示することはもちろん、福利厚生サービスの導入など、待遇改善を取り組みを怠るべきではないでしょう。
人間関係も風通しがよくなるように、職場環境全体を改善することが必要です。
保育士の仕事に将来性はある?
保育ニーズが極端に減ることは考えにくい
保育人材の不足についてはどうしても暗いニュースが多くなりがちですが、以上に書いてきたように、改善する取り組みも盛んです。
また、少子高齢化が進む日本では、保育士の将来は明るくないように思う方もいるかもしれませんが、現状では保育ニーズが減ることは考えにくいと言えます。
核家族化、ライフスタイルの多様化により共働きの夫婦やシングルマザーが増えたこと、女性の社会進出など、保育の需要は高まり続けています。待機児童問題さえ、まだまだ収束していないのが現状です。
保育士の劣悪な労働環境が注目され、国をあげて改善の取り組みが行われるようになったのも、こうした保育ニーズの高まりが背景にあるでしょう。
保育士は、これからも多くの人から必要とされる仕事であることは間違いありません。
保育士の今後の活躍の場は?
商業施設や民間企業、病院内の託児所での保育業務もあり
保育士の活躍の場も広がっています。
保育園や保育所のみならず、大規模商業施設(デパートなど)や、民間企業、病院内託児所などでも、保育サービスが提供される機会が増えています。
多くの労働環境改善の取り組みが行われ、ニーズも多様化している保育士という仕事。
まだ課題はありますが、子どもたちの笑顔を支える保育士は、これからもやりがいのある魅力的な仕事と言えますね。
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