オランダ発の「イエナプラン教育」を知っていますか?
- 保育士お役立ち情報
- 2019/09/26
「イエナプラン」という教育法が注目を集めています。幼児教育にも応用できる、その魅力について紹介します。
「イエナプラン教育」とは?
イエナプラン教育のことを私が初めて知ったのは、10年ぐらい前になります。
まだ保育の世界ではメジャーではありませんが、2019年度には日本初のイエナプランを使った小学校も開校し、少しずつその独特の魅力が知られ始めています。
イエナプラン教育は、ドイツのイエナ大学教授だったペーター・ペーターセン(1884−1952)が始めて、その後オランダで発展した教育法です。
イエナプラン教育は、幼児教育のメソッドではありません。小学校向けの教育法です。
ただし、オランダの小学校は4〜12歳を対象にしているので、幼児教育の要素を含んでいるといえます。
イエナプラン教育では、子どもたちは「お互いに異なる存在である」ということを出発点にしています。
「人は違っているからよい」「年齢や民族、文化、性別などの違いから多くを学ぶことができる」という考え方が根幹にあります。そのため、お互いの違いにどう関わるかが重要なテーマになっています。
イエナプラン教育がさかんなオランダは、ユニセフの子ども幸福度調査で何度か首位を獲得していて、「世界一子どもが幸せな国」と表現されることもあります。
イエナプランのような子どもへの働きかけが、そうした子どもの幸福感につながっているのかもしれません。
「イエナプラン」の主な4つの特徴
イエナプランには様々な特徴がありますが、主なもの4つを紹介します。
1. リビングルームとしての教室
イエナプラン教育では、教室を「リビングルーム」として捉えることが大きな特徴です。
私が以前、日本イエナプラン教育協会主催の説明会に行った時も、このあたりを強調していました。
印象的だったのが、子どもたちが教室の机や椅子を移動して、車座になって話し合う姿でした。子どもたちは学びながら、自分たちの教室の環境を、リビングルームのように自由に変えていけるようにしているのです。
2. 異年齢グループによる学級編成
イエナプラン教育のクラスは、4〜6歳児、6〜9歳児、9〜12歳児の異年齢グループになっていて、3学年いっしょに教育を受けます。
これを根幹グループといいますが、子どもたちは成長とともに兄弟関係のような立場の違いを経験していきます。
つまり、グループで一番年少だった子が3年目には一番の年長になり、更にまた年少になる…それを3回繰り返していくことになります。
そうした経験をすることで、子どもの個性や真の意味のリーダーシップが生まれると考えているのです。
3. サークル対話(車座)
イエナプラン教育では、車座になって子どもたちが話し合う「サークル対話」という形式が、多く使われています。
その際、先生は指導者ではなく、グループリーダーという役割になり、子どもたちの対話のファシリテーターとしてサークルに参加します。
そのようにして、先生と生徒が「教える―学ぶ」という関係ではないのも、イエナプラン教育の大きな特徴の一つです。
4. ワールドオリエンテーション
イエナプラン教育では、教科の区別がなく、ワールドオリエンテーションという総合学習の形態になっています。
テーマに対して、子どもたち自身が問いかけ、話し合い、計画しながら学習を進めていきます。
その中でも、話し合いは重要です。話し合いの中で、自分以外の意見や観察に触れることで、子どもたちは知見を広げ、それぞれの違いに気づいていくことができるためです。
イエナプラン教育の保育園への導入
イエナプラン教育は、小学校のための教育法ですが、保育に取り入れている保育園もあるようです。
ただ、その教育法をそのまま取り入れるというのは難しいので、保育園の実情に合わせて、ヒントにしていくことになると思います。
例えば、異年齢保育であれば、イエナプラン教育の根幹グループの考え方などはそのヒントになりそうです。
また、年中・年長児などは、車座になって「遠足でやりたい遊びを決める」などテーマを決めて話し合うのも新鮮かもしれません。相手の意見をきちんと聞くことの練習にもなります。
その際の保育士の関わり方は、「先生」ではなく「グループリーダー」のようにふるまって、子どもたちの自主性を引き出してあげましょう。
まとめ
イエナプラン教育には、日本の保育園にはないような、子どもの自発性を引き出す工夫がいくつも見られて、刺激的です。
保育の新鮮なヒントに出合うために、イエナプランのような海外の教育法を調べてみることをおすすめします。
ライタープロフィール
玉田 洋さん
保育園運営企業で、子育て雑誌編集長を経験し、その後、都内で保育士として勤務する。現在は「森の保育園」を計画中。
《編集注》
※画像はイメージです。実際のイエナプラン教育とは関係ありません。
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