知れば知るほどおもしろい!「レッジョ・エミリア・アプローチ」の魅力
- 保育士お役立ち情報
- 2019/05/10
イタリア発祥の幼児教育実践法「レッジョ・エミリア・アプローチ」が注目を集めています。 日本ではアート教育の部分が強調されがちですが、それだけではありません。その奥深い魅力について紹介します。
レッジョの根本にある考えとは?
レッジョ・エミリア・アプローチは、最近、日本でも広く知られるようになってきました。ただ、名前は知っていても、詳しく知る人はあまり多くはないようです。
その理念を知るのに最適な詩があるので、まずは抜粋してご紹介します。
作:ローリス・マラグッツィ(佐藤 学訳)
「子どもは
百の言葉を持っている。
(その百倍もその百倍もそのまた百倍も)
けれども、その九十九は奪われている。
学校や文化は
頭と身体を分けている。
そして、子どもにこう教える。
手を使わないで考えなさい。
頭を使わないで行動しなさい。
話さないで聴きなさい。
楽しまないで理解しなさい。
愛したり驚いたりするのは
イースターとクリスマスのときだけにしなさい。
【中略】
こうして学校の文化は
百のものはないと子どもに教える。
子どもは言う。
冗談じゃない。百のものはここにある。」
ワタリウム美術館 編『子どもたちの100の言葉』(日東書院本社)より
いかがでしょう。子どもたちに日々触れていると、「この感性、失ってほしくないな」とよく感じますが、ちょうどそんな気持ちを思い起こさせてくれませんか。
この詩を書いたのは、レッジョの礎を築いた教育家ローリス・マラグッツィ(1920〜1994)です。この詩にはマラグッツィの教育哲学が凝縮されています。
それは、「子どもには生まれながらに権利や無限の可能性がある」という考え方で、レッジョ・エミリア・アプローチの根本にもなっています。
レッジョは町ぐるみで子どもの創造性をはぐくんでいる
レッジョ・エミリア・アプローチは、イタリアの人口17万人の小都市、レッジョ・エミリア市で実践されている幼児教育実践法です。
例えば、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育には創始者の名前がついています。
それらと異なり、地名が付いているのが大きな特徴です。町ぐるみで、幼児教育の実践が行われているのです。
そうした歩みは、『ニューズ・ウィーク』誌が「世界で最も革新的な幼児教育施設」として、レッジョの施設を紹介したことで、全世界に知れ渡るようになりました。
なので、レッジョ・エミリア市には、今でも全世界から多くの視察者が訪れています。日本からも多く訪れているようなので、興味のある方は、そうしたツアーに参加してみるのも刺激になっていいですね。
レッジョ・エミリア市では、市内のすべての公立保育所・幼児学校でレッジョ・エミリア・アプローチが実践されています。質の高い創造的な教育がどこの施設でもできるようになっています。
そうした決まりは50年近く前に市の条例で定められていて、今でもずっと継続して守られているのです。一つの自治体がこれだけ独創的な幼児教育を長年継続している…日本の保育の世界ではなかなか想像できない話です。
町の中に、素材の倉庫「レミダ」がある
保育園で創作活動をするときに、その材料に困ることはありませんか。
いつか使うためにと、ペットボトルや段ボール、布などが倉庫に山積みになっているのが保育園のよくある風景ですね。
レッジョ・エミリア市には「レミダ」というリサイクルセンターがあり、ここが各園共同の素材倉庫になっています。
「レミダ」には、市内約200社と提携して、紙、金属、プラスチック、布など未使用の素材が多数集められています。
ここに集められた素材は、幼児教育を知り抜いた運営スタッフによって各園に配布され、子どもたちの創造的活動を支えています。
「レミダ」のおかげで、保育所のアトリエには驚くほどたくさんの素材が揃っています。
例えば、色鮮やかなボタン、ガラス、機械のようなものまで、子どもたちは見ているだけでワクワクして、何かをつくりたくなるのです。
まとめ
レッジョ・エミリア・アプローチの最大のポイントは、市全体が、幼児教育に取り組んでいることです。長い年月をかけた蓄積はマネできませんが、刺激的なヒントが様々にあります。ぜひ参考にしてみてください。
ライタープロフィール
玉田 洋さん
保育園運営企業で、子育て雑誌編集長を経験し、その後、都内で保育士として勤務する。現在は「森の保育園」を計画中。
《編集注》
※画像はイメージです。実際のレッジョ・エミリア・アプローチとは関係ありません。
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