まち中が顔見知りになる!?「まち保育」の魅力
- 保育ニュース
- 2019/02/07
保育士が、通常、地元の人と深く関わったりすることは少ないかもしれません。ただ、一方で、保育環境としての「まち」に目を向けると、そこは新鮮な魅力であふれています。園とまちをつなげることで、豊かな保育につながることもあります。そのヒントになるような「まち保育」の取り組みを紹介します。
『まち保育のススメ』(萌文社刊)より転載
「まち保育」で保育園とまちが、もっと近くなる
私が子どもたちを連れて散歩の途中、いつも元気に挨拶してくれるおばあちゃんがいました。園児と散歩しているだけでも、まちとのつながりを感じる機会って、意外とたくさんあったりしますよね。
せっかくなら、園として、もっとまちとつながっていけたらと考えたことはありませんか。そうであれば、地域と保育園をつなげる「まち保育」という考え方があります。
「まち保育」という考え方を初めて紹介したのは『まち保育のススメ―おさんぽ・多世代交流・地域交流・防災・まちづくり』(萌文社)という本です。
その主著者である、横浜市立大学准教授の三輪律江さんによると、「まち保育」は、ある問題意識から始まったようです。
「まちはこどもの育ちに欠かせないものです。保育施設は、そこに集うこどもたちにとっては家のような場所で、住民的側面が強いにもかかわらず、我々の調査からは地域とうまくつながることができていないと悩む保育施設も多く、一方で、子どもの育ちのためにまちをフル活用している例はほとんど知られていない現状もありました。」と三輪さんは言います。
そうした保育園と地域の相互理解を目指して、取り組みや研究がスタートしていったようです。
まちにつながることを楽しむ「まち保育」ワークショップ
「まち保育」とは具体的にはどんな活動をするのでしょう。三輪さんたちが、横浜市の二つの保育園でおこなってきた「まち保育」ワークショップの代表的なものを紹介します。
・おさんぽマップ点検 + 発見ワークショップ
ーおさんぽマップの「点検」で新しい「まちの資源」をゲットしよう
・キッズカメラマンワークショップ
ーインスタントカメラを活用して子ども目線の日常風景を切り取ろう
・おさんぽマップ・バージョンアップ
ーまちの新しい発見をつないで新しいルートをつくろう
・み〜んな一緒にまち歩き
ー新おさんぽルートの検証も兼ねて地域の人たちとまち歩きしよう
・「ありがとうカード」大作戦ワークショップ
ー子どもたちの「まちのお気に入り」を地域の人たちに伝えよう
『まち保育のススメ』(萌文社刊)より転載
名称を読んだだけで、どれも楽しそうでわくわくしてきますね。「まち保育」ワークショップを続けることによって、今までつながってなかったまちの「モノ・コト・ヒト」とのつながりができていくようです。
まずは、園のおさんぽマップを見直すことから始めてみてもいいかもしれません。例えば、子どもたち、保護者、地元の人たちと一緒にまちを歩いて、「まち保育」の視点から新しいおさんぽマップを作るのもいいですね。
子どもたちにとっても楽しい経験になりそうです。ワークショップの詳細を知りたい方は、書籍『まち保育のススメ』をぜひご覧ください。
地元との関係に変化あり 「まち保育」の効果
「まち保育」の活動を続けていくと、どういう変化が起こっていくのでしょう。三輪さんによるとまちの人たちとの間に目立った効果があったようです。
「お散歩ワークショップを重ねていくうちに、地元の方々の認知と声かけの頻度が高まり、子どもたちをぱっと見て『○○保育園の子』とわかるようになったと言われたりするようになりました」
保育園としての活動にとどまらず、まちの人たちに参加してもらうようにしていくのがポイントですね。
最近では、まるで「迷惑施設」のように考えられることもある保育園。こうした取り組みを重ねていくことで、顔の見える関係になっていき、お互いの気持ちに配慮した関わり方もできていくのだと思います。
普段の保育に、「まち保育」の視点を入れていくと、今までになかった発想が生まれてくるかもしれません。地域とのつながりづくりの様々なきっかけになりそうですね。
ライタープロフィール
玉田 洋さん
保育園運営企業で、子育て雑誌編集長を経験し、その後、都内で保育士として勤務する。現在は「森の保育園」を計画中。
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