保育園の最終形態?園舎のない「森のようちえん」って?
- 保育士お役立ち情報
- 2019/01/24
「森のようちえん」を知っていますか?北欧諸国から始まった、自然の中での幼児教育のことです。
一般的な「森のようちえん」は園舎を持たずに、朝から森に集います。一日を森の中で過ごすことも珍しくありません。ここ最近、日本でもさかんになってきた、この新しい潮流についてご紹介します。
「森のようちえん」は、自然が保育環境
森の“ようちえん”と平仮名になっているのは、こうした取り組みが幼稚園だけでなく、保育園でも、また、自主保育、育児サークルなどでも行われているからです。
多くの「森のようちえん」では、大人の考え方を押し付けずに、子どもが持っている感性を信じて、それを引き出すようなかかわり方をするようにしています。
私が「森のようちえん」に魅力を感じているのは、そうした「待つ保育」を基本姿勢にしているからです。それは、保育者の都合で子どもに関わるのでなく、子どもが自分で考えて動き出すのを「待つ」ということ・・・実際、とても難しいですよね。それを実践する「森のようちえん」の姿勢には学ぶべきところが多いと感じています。
最近では、「森のようちえん」の特徴を持った保育園がいくつも誕生しています。中でも認可保育園は園舎を持ち、自然環境が重要な保育環境であるという考え方を取っているのが一般的です。
「森のようちえん」で育まれる、子どもの心
NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟理事長、内田幸一さんによれば、「森のようちえん」では、子どもの主体性や関係性が育まれていくそうです。
「子どもたちは、様々な自然の中での遊びを経験することで、自分のやりたいことを自分で見つけ、周囲の状況や他の子の行なっていることにも関心を寄せ、幼児なりに主体的な行動をするようになる」といいます。
自然活動というと、健康な身体づくりのイメージがあります。ですが、自然の中でこそ心が育つ、というのが「森のようちえん」のユニークなところです。
更に、内田さんによれば、子どもたちは「人間関係的な繋がりもたくさん経験するので、他者との関係づくりや協調性や共同的な動きを上手に行い、人に対する思いやりや優しさをたくさんあらわすようにもなる」ということです。
私も幼児の自然活動に関わっていますが、自然の中でこそ、その子の人間性が輝く瞬間を目にすることが多くあります。大切な幼児期、自然の中だからこそ育まれるものがあるのだと思います。
自然保育を柱に、子ども、保育者、保護者がつながる
内田さんによれば、「森のようちえん」では、自然保育を通して、子どもと保育者の独自の関係性が育まれていくようです。
自然の中で、まず子どもに変化が生まれます。「子どもたちが生き生きと自分らしさを見せるようになる」そうです。
それは、「自分を肯定的に見てくれる大人たちの中にいるということが、子ども自身でも感じられるため」だといいます。
保育者は、そうした子ども一人一人の意思や想いを受け入れ、その子の気持ちに寄り添い、信頼関係が生まれていくようです。
これは、「森のようちえん」だけでなく、保育全体に当てはまる考え方ですね。
また、保護者との関係はどうなっているのでしょう。
「森のようちえん」では、情報を知らせる機会を設けて、ともに共同で子育てを行う関係を築く努力をしているそうです。
「保護者の協力はとても得やすい状況」だと内田さんはいいます。保護者にとっては、「森のようちえん」を選択して、その姿勢に強く共感していますから、保育者との距離はぐっと近いようです。
「森のようちえん」は自然保育という点に注目が集まりますが、子どもとの信頼関係、保護者との協力関係など、通常の保育園が大事にしていることも踏まえて活動しているようですね。
子どもたちに自然との触れ合いをどう用意するか、保育士としても工夫が必要なテーマですよね。「森のようちえん」のような自然保育からは、これからの保育に向けて、いろいろとヒントをもらうことができるように思います。
ライタープロフィール
玉田 洋さん
保育園運営企業で、子育て雑誌編集長を経験し、その後、都内で保育士として勤務する。現在は「森の保育園」を計画中。
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