保護者クレームを減らすために保育士ができること
- 保育士お役立ち情報
- 2017/05/11
保育士をしていると、保護者からのクレームに悩まされるといった経験をしたことがあるのではないでしょうか。そんな悩みの種を少しでも減らせる方法があるのなら、知りたいと思いませんか?今日は、園全体で取り組んでいける保護者からのクレームを減らす方法をお伝えします。
クレーム対策は新年度のスタートが重要
新年度がスタートする4月。新しいクラスに対する期待が膨らむ一方で、保護者とのかかわりに対して不安を感じている保育士もいるかもしれませんね。しかし、こちらがネガティブな感情を持っているとそれは保護者にも伝わり、クレームが発生しやすい環境がつくられてしまいます。クレーム対策は最初が肝心です。どんなことがあっても、「この一年はこのクラスの子どもたちと、そして保護者といい関係を築いていくんだ!」と、肝をすえて乗り切っていきましょう。
なぜクレームをつけたくなるのか?
私は以前、クレームでかなり苦い経験をしました。保護者から子どもの発達についての相談を受けたので、自分の思いや意見をお伝えし、心療内科のパンフレットをお渡ししたところ、園長に対してクレームを出されてしまったのです。園長は、私が個別に関わりが必要だと思った時に丁寧にかかわっていることを知っていたため、私をフォローするような話をしたことによって更に激怒され、大変な騒ぎになってしましました。今思えば、「クレームを言われて当然なのかな」と思えるのですが、当時の私は「子どものことを思って言ったのに、なんでわかってくれないの」と反発心でいっぱいでした。今振り返ると、私が保護者の『本当に伝えたい気持ち』をくみ取ることができなかったために、起きてしまった出来事だと分かります。
人の言葉や行動の裏には『本当に伝えたい気持ち』が隠されています。この保護者の場合ですと、「子どもの発達への不安」「心療内科を進められたことの悔しさ」「自分の話より園の保育士の見方をされたことへの不満」「家族にうまく伝えられないもどかしさ」が考えられます。これが保育士に理解されないと感じてしまったために、クレームという形で行動を起こしているのです。きっと、この保護者は私に気持ちを受け止めてもらいたかっただけなのでしょう。「心配ですね。」「一緒に子育てして行きましょう。」「できることは協力しますよ。」と言ってもらいたかっただけで、心療内科を紹介してほしいわけではなかったのです。
保護者クレームを減らすために、クラス担任ができること
保護者のクレームを減らすためにクラス担任ができることはどんなことでしょう?まずは、信頼関係作りですね。信頼関係を築くためには、相手の話を「聴く」ことが大切です。「聴く」とは、耳をしっかりと傾け、相手の様子を観察し、表情や雰囲気、心の声も「聴く」ことです。保育士は、子どもと関わるだけが仕事ではありません。保護者対応も重要な仕事に位置付けられていますね。子どもは、頭で考えていることと、口に出して言っていることはほぼ同じだと思っていいのですが、大人はそういうわけにはいきません。言葉と心は裏腹です。言葉では「大丈夫ですよ」と言っていても、心の中では「いい加減にしてよ。何回ケガさせたら気がすむの!」と叫んでいるかもしれないのです。ここで、あなたが心の声に耳を傾け「聴く」ことができていれば保護者の対応も変わってくるはずです。「大丈夫です」という言葉を鵜呑みにして「お母さん、ごめんね〜」と軽く謝ってしまうということはしないはずです。
クレームを減らすためにクラス担任ができることは、まず、送迎時の保護者の様子をしっかり観察することです。「○○さんは、毎日忙しそうで疲れているな。少しイライラして子どもと話をしているな」「○○さんは、いつも穏やかでおっとりしている。子どもにガミガミ怒ることはないな」「〇〇さんは、今、旦那さんとうまくいっていなくて辛そうだな。この先の不安も感じているかもしれないな」など、観察しておくことで、いざという時の対応が随分変わってくるでしょう。大切なのは、「聴く」ことです。保護者が「わかってほしい」と思っている『本当に伝えたい気持ち』を見つける目を養ってくださいね。
保護者クレームを減らすために、管理職ができること
保護者からのクレームが増加傾向にあるため、園内にもクレーム担当の保育士が設置されている園も多いのではないでしょうか。クレーム担当の保育士、または、管理職がクレームを減らすためにできることは何でしょうか。
まずは、園内での共通理解が重要です。各クラス担任が日々観察している保護者の様子を職員会議や園内研修で報告してもらう必要があります。気になる保護者がいれば、普段の送迎時に意識的に話しかけたりすることも良いでしょう。「気にかけてもらえる」ことは、誰にとっても嬉しいものです。「大切にされている」と感じると、人は安心するのです。子どもの安心安全な存在になるのが担任なら、保護者の安心安全な存在になるのがクレーム担当、管理職の仕事なのかもしれません。そんな存在でいることができれば、クレームの芽も小さなうちに解決できるのです。いつもと違う保護者の様子を察知することができれば、早めに話を聞くことだってできるでしょう。小さな違和感を放置せず、一つ一つ丁寧に対応することが大きなクレームを減らすためのコツになります。
何でもかんでも、保護者の言いなりになればいいと言っているわけではありません。お互いにとって安心できる関係性が築けていれば、無理難題を言ってくることもないでしょう。もし、対応不可能な要求があった場合でも、普段からの信頼関係が築けていれば「NO」ということだってできますよね。ただし、「NO」という場合にも、保護者の「わかってもらいたい気持ち」はしっかりと受け止めることを忘れないでください。
最後に
理不尽なクレームを言ってくる保護者もいるかもしれませんが、保護者の「わかってもらいたい気持ち」を満たしてほしいという要求であることも多いのではないでしょうか。保育士との信頼関係が成り立っていれば、クレームに発展しないこともたくさんあります。日々の保育の中で、子どもたちを理解し気持ちに寄り添おうとする姿勢と同じように、保護者を理解し気持ちに寄り添える保育士でありたいですね。
筆者プロフィール
野村恵里(
colorful comunications代表)
現場経験20年の元公立保育園保育士。退職後、保育士養成校の専任講師として勤務。保育関係におけるアンガーマネジメント講演を実施。2017年6月、保育士のためのアンガーマネジメント(仮名):中央法規:を出版予定。
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