怒りや不満、不安など「ネガティブ感情」に支配されないために必要なこと
- 保育士お役立ち情報
- 2017/04/05
保育士が不足している現代では、保育士1人にかかってくる責任は以前に比べて重くなってきています。一方、保護者も朝早くから晩遅くまで働き、日々の忙しさからくるイライラを保育士に向けてしまう、そんな例も増えているのではないでしょうか。
今回は、新人、若手保育士がその重圧を乗り越え、一人前の保育士になるために必要な感情コントロールについてのお話をしていきましょう。
忙しい、辛い、疲れた、困った、どれも大切な気持ち
私が保育士になったのは約25年前。今より保育士の心は潤っていたように思います。保護者も、「保育園は子どもを預かってくれる有難いところ」という意識の方が強かったかもしれません。
でも今の時代は違います。朝延長、夜延長の長時間保育で労働時間は細かくシフト化、サービス残業も増加しています。個別に配慮の必要な子どもも増え、通常保育以上の準備が必要であったりと、日々の忙しさに追われ心の余裕が失われつつあります。
さらに、保護者層の若年化や核家族化、フルタイム労働が増えている中で「休日でも保育園が子どもを預かるのは当たり前、保護者の要望を聞き入れるのも当たり前」と思っている保護者も多いようです。
このような状況では、特に新人、若手保育士には負担に感じることも多く、心が折れそうな時もあるのではないでしょうか。
毎日忙しい、保育がなかなかうまくいかずに辛い、残業が続いて疲れた、保護者のクレーム対応に困る。
そんなネガティブな感情に押しつぶされそうになり、保育士としての自信を失ってしまいそうになる時もあるかもしれません。
でも、忙しい、辛い、疲れた、困った、悲しい、悩む、寂しい、不安、焦り、苦しい、心配、憂鬱、孤独、このような感情も大切な自分の気持ちです。心に沸き起こる感情そのものに、良いも悪いもありません。感情は感情以外の何物でもありません。否定することはなく、「自分は今、〇〇な気持ちなんだ」と受け入れるようにしましょう。
まずは、自分が自分の感情を大切にすること。そして、その感情をありのままに受け入れることが大切です。
ネガティブ感情に振り回されず、上手くつきあうコツ
自分の気持ちを受け止めることは大切なことだとお話しましたが、いつまでもネガティブな気持ちが充満している心の状態のままでいるのはお勧めしません。
次のステップとして、自分の心に溜まっているネガティブ感情を少しでもプラスの方向に近づけるようにしましょう。
まず「ネガティブな感情+ポジティブな感情=あなたの100%の感情」だと思ってください。
この割合を少しでもポジティブ寄りに持っていくことができればあなたの気持ちは楽になるはずですね。
では、どうやってポジティブ寄りに持っていけばよいか?
それには2つの方法があります。
1つ目は「ネガティブな感情を楽にするための方法を考えて行動する」こと。
例えば、「今は、クラス運営がうまくいかなくて辛い。でも、〇〇先生に相談して、いいアドバイスがもらえればうまくいくかもしれない」という具合です。アドバイスをもらって、保育がうまくいくようになれば「辛い」気持ちは楽になり、上手くいったという「安心感」や「嬉しさ」というポジティブな感情がプラスされることになります。
2つ目は「ネガティブな感情をひとまず置いて置き、自分がポジティブな気持ちになれるような行動をとってみる」方法です。
どんなに今の状況を切り替えようとしても、自分の力だけではどうにもならないことだってありますよね。そんな時、その状態にいつまでも向き合っていてもしんどいだけです。だったら、今、自分をネガティブな気持ちにさせていることから離れて、気持ちをリセットするために、自分の好きな事や気持ちよくなることをあえてしてみるのです。「エステに行って美肌を手に入れる」「友達と温泉旅行に行く」などです。そうすることでポジティブな感情が注がれ、ネガティブな感情が緩和されるでしょう。
理不尽な怒りをぶつけられた時の対処法
とはいえ、保護者に突然怒鳴られた時、先輩保育士のミスを自分のせいにされた時など、自分に落ち度がなくても理不尽に怒りをぶつけられてしまうと、不信感や不満が募り、感情のコントロールは難しいと思われるかもしれません。
でも、ここでネガティブな感情に縛られ、いつまでも心を閉ざしたままでは、今後の保護者対応は上手くいきませんし、先輩との関係も修復することはできません。
あなたが理不尽だと思うことは、「自分は落ち度がない」のだから、落ち込む必要なんてないのです。こんな時こそ感情コントロールしてみましょう。
「保護者に突然怒鳴られて、本当にびっくりした。そして、手紙で連絡したのに「聞いていない」と言われ、怒鳴られてしまったことが、辛かった。」とまず、自分の気持ちを受け止めた上で、「なぜ、保護者は自分に対して怒鳴ったのだろう?」という視点で相手のことを考えてみてください。
「周りのみんなが知っていることを、自分が知らなかったから恥ずかしかったのかもしれない」
「自分が見ていないということを責められることが嫌だったのかもしれない」
「会社で嫌なことがあって、イライラがたまっていたので大声を出してしまったのかもしれない」
こんなふうに、相手には相手の状況や気持ちが関係していて、「怒鳴る」という行動を起こしているということに気づくことができます。ここに気づくことができれば、「理不尽に怒鳴られた」ことばかりに意識を集中することなく、気持ちをリセットしやすくなります。
最後に
保育士を続けていくためには、感情コントロールのスキルを身に付けることは必須だと思います。
対子ども、対保護者、対同僚、対地域など、保育士の仕事は人との関わり無くして成り立ちませんね。これらの関係性の中で求められるのはコミュニケーション力の高さでしょう。このコミュニケーション力の土台になるのが、感情コントロールなのです。
感情はコントロールできます。感情コントロールができる保育士が子どもたちと日々関わることで、子どもは保育士をモデルにして感情をコントロールする方法を学びます。ネガティブな感情をどう表現するか、どうやって周りの人に助けてもらうのかを学びます。
自分のネガティブな感情に振り回されず、上手く付き合うスキルを身につけていってくださいね。
筆者プロフィール
野村恵里(
colorful comunications代表)
現場経験20年の元公立保育園保育士。退職後、保育士養成校の専任講師として勤務。保育関係におけるアンガーマネジメント講演を実施。2017年6月、保育士のためのアンガーマネジメント(仮名):中央法規:を出版予定。
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