苦手意識を持たないで!『気になる子』への対応法

保育士ならクラスの中で「この子、気になるな」と感じる子どもや「どう対応していいのかわからない」と悩む子どもに出会ったことがあるのではないでしょうか?発達障害の診断を受けていないのに、落ち着かない、指示が通らない子どもが増えているために、集団作りに悩んでしまうこともあるでしょう。そんな子どもたちにどう対応していけばいいのかについて考えてみましょう。

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保育士の苦手意識が『気になる子』をつくりだしている!?

こちらの言うことを聞いてくれなかったり、落ち着いて話を聞いてくれなかったり。「子どもだから…」「個性だから…」と頭では分かっていても、ついつい苦手意識をもってしまう保育士も多いかもしれません。しかしその苦手意識が、『気になる子』を作ったり状態を悪化させていることもあるんです。そのメカニズムを見ていきましょう。

「好きな人」は同じを探し、「苦手な人」は違うを探す

あなたが「好きだ」と感じる人は、「あなたと同じ価値観、考え方」の人ではないですか?好きな異性ができた時、その人と同じところを見つけると「私と同じ!」なんて、嬉しくなったりしませんか?私たちは、仲良くなりたい相手と同じところを一生懸命探すのです。そして、同じところを見つけると更に「好き」になるのです。反対に「苦手な人」の場合は「二人の違い」を探そうとするのです。「あの人の、〇〇があり得ない」「信じられない」というのです。そして、更に苦手意識が高まるのです。

苦手意識は信頼関係をこわす

保育士は、様々な人間関係の中で生活しています。子ども、保護者、同僚、地域、そして自分のプライベートでも、コミュニケーションを取らなくてはいけない場面がたくさんありますね。そうなると「この人、苦手だな」「気が合わないな」と思う人がいるのも当然です。でも、それを前面に出してしまうと、人間関係は壊れてしまいます。保育をする上で、子どもとの信頼関係は大切です。信頼関係のもとに子どもたちは成長するのです。そう考えると、あなたがたとえ「苦手」と感じる子どもとも上手に付き合っていかなくてはならないのです。

問題行動は「SOS」のサインかも

「この子、苦手」と、あなたが思えば思うほど信頼関係は壊れていきます。子どもは敏感です。あなたの「苦手と感じるオーラ」はお見通しです。だから、自分を見てほしくて、関わってほしくて、気にしてほしくて、SOSのサインを出しているのかもしれません。落ち着きのない子どもの行動だけを見て、「問題児」と決めつけないでください。あなたの意識や対応を変えてみることで、今までと違った関係になれるかもしれません。

『気になる子』への対応法 3つのステップ

苦手意識が子どもとの関係に悪影響を及ぼしていることは理解いただけたかと思います。では具体的にどのように対応すればよいかをご説明します。

1:ポジティブポイントを探す

前述したように、「苦手」は違いを探すことです。今まで、違いに注目し批判的に捉えていた視点から、子どもの「良い面」に注目することを心がけてみましょう。そのためには、子どもの「ポジティブポイント」を見つけることです。「ポジティブポイント」とは、「できない」ではなく「できる」ことです。「できる」のハードルは、低いところでOKです。あなたのできて当たり前を捨て去ってください。「朝、元気におはようが言えた」「声をかけたら片付けができた」「ケンカをした後、ごめんなさいが言えた」等、些細な事でも「ポジティブポイント」と捉えて、たくさん見つけてみましょう。今まで気づかなかった子どもの良い面に気づくことができると、苦手意識も薄らいでくるでしょう。

2:子どもの状態を受け止める

子どもの「今」を、否定しないようにしましょう。否定しないということは、そのままを受け止めるということです。今、目の前にあるのは、あなたが苦手意識満載で関わってきた子どもたちの状態です。今を受け止め、今後をより良い方向へと変えていきましょう。そうすることで、子どもたちの心が満たされます。否定されないということは、子どもの安心感につながります。安心感を得られる相手に、子どもは信頼を寄せます。あなたが子どもを受け止めることで、子どもは虚勢を張る必要がなくなるのです。あなたに見てもらい、関わってもらい、気にしてもらえるようになれば、問題行動を起こす必要がないのですから。ステップ2では、今までの関わり方を変え、ありのままを受け入れより良い未来に目を向けることを意識することです。

3:子どもの自己肯定感を高める

今まで「気になる子ども」「苦手な子ども」として扱われていたことで、自尊心や自己肯定感は低くなっているかもしれません。「どうせ自分なんて」という状態では、今後の成長が心配です。そこで、子どもが自分は大切にされていると思えることや自分に自信が持てるようにするために、あなたが見つけた「ポジティブポイント」と保育の中で伝えていきましょう。どの子どもにも言えることですが、先生に褒めてもらえることは、大きな自信につながりますよね。特に、気になる行動をしている子どもは「褒められる」経験が少ないものです。叱られることはあっても、褒められることはない。本人も、クラスの友達にも「叱られる子」という印象が強くなってしまいます。だからこそ、クラスの中で「ポジティブポイント」を伝えてほしいのです。「叱られる子」のレッテルを取り払い「いいところがたくさんある子」に書き換えていきましょう

終わりに・・・子どもとの信頼関係が、「気になる子ども」を救います

乳幼児期の安心できる人間関係や自分を信じる力の有無は、子どもの成長に大きく影響を与えます。この時期に関わる保育士は、そのことを意識しておかなければなりません。子どもを好き嫌いで判断せず、プロフェッショナルとしての関わりを意識しましょう。それが「子どもの人間形成の基礎」を培う保育なのだと思うのです。「気になる子ども」との信頼関係ができれば、あなたのクラス運営はずっと楽になるはずです。そして、その保育が「気になる子ども」を救うことになるのではないでしょうか。

筆者プロフィール

野村恵里( colorful comunications代表)
現場経験20年の元公立保育園保育士。保育士研修や教員研修などで、感情コントロール方法(アンガーマネジメント)について積極的に講演を実施。保育士の折れない心創りをサポートし、保育&子育ての現場をHappy&colorfulにするため活動を行っている。
保育士養成校の専任講師として、保護者支援のためのコミュニケーション法について講義も務める。

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