保護者との関係を壊さないクレーム対応の秘訣

保育士の業務の中で、頭を悩ますものの一つにクレーム対応があります。あなたが「ありえない」と思うようなことを平気で言ってくる保護者に対してどう対応していくのか。険悪な関係にならないために知っておきたい「クレーム対応の秘訣」をご紹介します。

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まず「保護者と保育士の価値観を整理」してみましょう!

保護者は保育士からすると、信じられないようなクレームをつけてくることがあります。その対応をするためには、「なぜそんなクレームが発生してしまうのか」というところから知っておくことが大事です。

保護者が大切にしている価値観を見つけよう

私たちは一人一人違った価値観を持っています。当たり前のことですが、実は、案外理解していない人が多いのです。つまり、あなたが「ありえない」と思うことでも、保護者にとっては大切で価値のある出来事なのかもしれないということ。だから、自分の価値観の中で考え、それを当たり前のように主張してくるのです。
そんな「ありえない」クレームを言ってきた保護者に対してあなたがまず最初に行ってほしいのが、「相手の価値観を見つける」ことです。ここで、価値観を見つけるためのヒントをお伝えしましょう。それは、「べき」という言葉を意識してみることです。「○○であるべき」「〇〇なべきでない」というイメージです。例えば、「発表会ではうちの子を主役にするべき」、「子どもの衣服は汚すべきではない」、「うちの子には一切けがをさせるべきではない」、「保護者の都合に合わせて保育をするべき」。どうでしょう?このような「べき」にあなたは共感できますか?私なら「ありえない!」と叫んでしまうでしょう。保護者の価値観と、保育士である私の価値観には大きなギャップがあるのです。

自分の価値観を考えてみよう

私ならこう思います。「発表会は、子どもたち全員が主役。一人一人が同じように舞台に立てるようにしているのだから、自分の子どもの役柄に保護者が口を出すべきではない」、「子どもは遊んだり喧嘩したりすることで、社会性や人間関係作りを学んでいくのだから、子どものうちに経験できることは保育園のうちに学んでおくべき」、「保育園は子どもの最善の利益を大切にするところ。保護者の都合ばかりに合わせるべきではない」。ではそれを保護者に直接伝えて食って掛かるようなことをしてもいいものなのでしょうか?もちろんNGですよね。
どんなに自分の価値観とかけ離れていたとしても、それが相手(保護者)の価値観なのですから。ここで大切なのは、「自分の価値観を知っておく」こと、そして「自分の価値観を押し付けようとしない」ということです。

関係を良好に保てるクレーム対応3つの秘訣

自分(保育士)と相手(保護者)の価値観が全く違う、ということを把握した上で、具体的にどう対応すればよいのでしょうか?3つの秘訣をお伝えします。

1:保護者の価値観を否定しない

どんなクレームだとしても、絶対に否定しないようにしましょう。否定しないということは、そのままを受け止めるということです。「肯定する」ことではありません。「発表会で、お子さんを主役にしたいのですね。」「服を汚されたくないんですね。」など、そのままの言葉を受け止めましょう。受け止めてもらうことで、保護者も戦闘態勢が少し緩んでくるはずです。

2:クレームに込められた保護者の気持ちを言葉にしよう

クレームを言ってくる保護者の心境を考えてみましょう。「怒っているからクレームを言ってくる」という表面上の行動ばかりに目を向けていると、クレーム対応は上手くいきません。クレームの裏側にかくれている保護者の本心を見つけることを意識しましょう。相手をよく観察し、話をよく聞きましょう。言葉の端々に、本心が見え隠れしているはずです。
「わが子が主役なら自慢」、「衣服が汚れると後が面倒」、「けがをすると心配」、「仕事が立て込んで疲れてる」、「休みたい」などの気持ちです。この本心に目を向け、寄り添った対応ができれば、クレーム対応も上手くいくのです。例えば、「〇〇ちゃんを主役にしてほしいと思われているんですね。お母さんにとっては、○○ちゃんが自慢のお子さんなんですね。その気持ちわかりますよ。」こんな感じで伝えてみましょう。

3:問題解決に向けての声の掛け方をしてみよう

さあ!ここからが重要ですよ。問題解決するためには、自分にとっても保護者にとっても納得できる方法を見つけることが大切ですよね。そして「今後、どうありたいのか?」を確認していく必要があります。その時に注意しなければならないのは、保護者の意見を否定しないようにしながらも、園として、そして保育士として無理なことは「できない」ということを丁寧に伝えるということです。その上で「今後、〇〇さんは何を望まれますか?対応できる範囲で、できる限り協力します」ということを伝えましょう。100%は無理でも、何とかしたい気持ちがあることを伝えることが大切です。 「私としましては(園としましては)△△の対応はできますが、□□は難しいです。申し訳ありません」と正直に伝えましょう。

例えば、「なぜ発表会でうちの娘はうさぎの役なの?主役にしてください!」というクレームが発生した場合、「主役にしたいと思っているのですね。私は、今〇〇ちゃんはうさぎの役をとても頑張っていると思っています。セリフもしっかりと覚えていて、自信をもって演じていますよ。劇遊びでは、皆が主役のように盛り上がって練習しています。〇〇ちゃんの練習の様子を見てみられますか?」というように、「気持ちを理解していること」、「できないこと」、「代替案」を丁寧に伝えてみてください。

最後に…クレーム対応の秘訣は批判的な見方をしないこと

クレームを言われることにびくびくしていると、保護者の本心に気づくことはできません。そして、あなたも自信をもって保育ができなくなってしまいます。クレーム対応の3つの秘訣を実践することで、あなたの保育は随分やりやすくなるはすです。クレームにおびえない保育士を目指してくださいね。


筆者プロフィール

野村恵里( colorful comunications代表)
現場経験20年の元公立保育園保育士。保育士研修や教員研修などで、感情コントロール方法(アンガーマネジメント)について積極的に講演を実施。保育士の折れない心創りをサポートし、保育&子育ての現場をHappy&colorfulにするため活動を行っている。
保育士養成校の専任講師として、保護者支援のためのコミュニケーション法について講義も務める。

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