公園内に保育園を設置する動きが加速中！

保育ニュース
2015/11/27

# 待機児童

2015年度の待機児童数は2万3,167人と前年より1,796人増え、５年ぶりに増加という結果になりました。政府が目標とする「2017年度までに待機児童数0」を達成するためには、更なる取り組みを行う必要があります。その取り組みの一つとして、公園内に保育園を設置する計画が進められています。

待機児童問題解消のため、公園内の保育園開設が決定

国家戦略特区で開設できるよう規制を緩和

待機児童が増える一方で、保育園の開設はなかなか進まないーその要因のひとつは、「保育園用地の確保の難しさ」です。特に認可保育園は面積などの設置基準が厳しいため、新設が難しい状況でした。
そこで打開策として出てきたのが、「公園内での保育園開設」です。本来公園は環境維持のために遊具などの限られた施設しか設置を認めないと都市公園法で定められているのですが、地域を限って規制緩和を行う“国家戦略特区（※）”内では、その規制を緩めることになりました。

※”国家戦略特区”とは？
日本経済復興のため、規制を緩和し、産業の国際競争力を高めると共に海外企業を誘致することを目的とした地域。東京圏・関西圏・沖縄県・新潟県新潟市・兵庫県養父市・福岡県福岡市・沖縄県・秋田県仙北市・宮城県仙台市・愛知県が国家戦略特区に指定されています。

荒川区での開設が決定！品川区、世田谷区も整備を進める

規制緩和を受けて、2017年4月に荒川区・品川区・世田谷区の都市公園で、保育園が開設される見込みです。
荒川区は都立汐入公園での認可保育園設置計画が決定しました（定員162名）。既存の利用者へ配慮するため、「一般開放できる園庭を屋上部分に設置する」としています。新設する区立宮前公園にも保育園を設置する方針です。
品川区は区立西大井広場公園で、世田谷区は都立祖師谷公園と都立蘆花恒春園で保育園設置を計画しています。

都内以外でも、横浜市や大阪付、仙台市などで設置が計画、検討されています。

公園内保育園、メリットとデメリット

園内に保育園を設置することには、どのような利点、そして課題があるのでしょうか？見ていきましょう。

公園内保育園の利点

用地確保がしやすい

公園内保育園の最大のメリットは、用地確保のしやすさです。特に都内は土地価格の高騰などで認可保育園設置のための用地が十分とは言えません。実際、今年4月時点での待機児童数が全国最多の世田谷区は、これ以上利用可能な区有地がもう無いとしています。すでに保有している公園内に保育園を建てることが可能になれば、用地確保に関する負担は軽減されるでしょう。

需要に応じた利用が可能

現在は待機児童が多い状況が続いていますが、今後子どもの数は減っていくため、保育園に対する需要は減少します。そうなった場合には施設を撤去すれば、元通り公園として利用することができます。跡地利用をどうするかについて悩む必要が無くなります。

公園内保育園の課題

公園利用者、地域住民との関係性構築

公園には子どもからお年寄りまで様々な方が訪れます。そんな場所に保育園が開設されるとなると、今まで通り利用できなくなることに関して不満がでてくる可能性があります。一般利用者にできるだけ制限がかからないよう、新設の際は考慮する必要があるでしょう。例えば上記の荒川区では、「一般開放できる園庭を屋上部分に設置、園庭はゲートボールコートが二面とれる大きさにする」など誰でも利用しやすいよう計画しています。都内など土地が狭い場合は園庭の無い保育園の子どもたちが遊びに来くることも多いので、限られたスペースでどう折り合いをつけるのか考えなければいけません。

また地域住民の中には、「静かな公園」が近くにあると考えて家を購入した方もいるでしょう。公園内に保育園ができればある程度騒がしくなることは避けられないため、環境悪化や資産価値の低下になると考え保育園に反感を持つ住民も出てきかねません。どうやって良好な関係を保っていくかも、公園内保育園の大きな課題となります。

≪参考URL≫
・待機児童解消へ公園に保育所　17年４月、都内中心に（日本経済新聞）
・荒川の都立公園内に保育所計画　園児とお年寄り「共存」（東京新聞）