公設民営化が進む理由に直撃!「公設民営化で働く保育士が大変なこと」とは
- 保育インタビュー
- 2015/09/11
公設民営方式を認可保育所に導入する自治体が増加しつつあります。なぜ、公設民営の保育園が増えるのでしょうか、また、そこで働く保育士にはどんな影響があるのでしょうか。この疑問について、首都圏に4拠点の公設民営保育園を運営する、サクセスホールディングス株式会社の松井さんにお答えいただきました。
松井 基明 様
サクセスホールディングス株式会社 人材開発部 マネジャー
米国CCE Inc.認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー
公設民営化の保育園が増えている理由
― なぜ、公設民営の保育園は増えているのでしょうか。
大きく2つの背景があると思います。
1つ目は、自治体の財政の制約がある一方、保育を必要とする方が増えている事です。
待機児童対策をするには箱(施設)や人材が必要です。しかし、自治体の財政だけでは園を新設できず、園を増やしても新たな人材を雇用する予算を潤沢に確保する事が難しいのです。
今、公立保育所は非正規職員の比率が増えて5割に達しています。財政の制約があるため、正規職員の配置にも反映されているという見方もあるようです。
2つ目は保育ニーズの多様化です。
共働き世帯の増加、働き方の多様化によって、早朝、夕方・夜間を含めた保育サービスの拡充が求められています。これは従来の行政サービスにはなかったもので、民間運営であれば地域ニーズに柔軟に対応することができます。
― 民間企業は、公設民営をどのような流れで受託するのですか?
社会的ニーズは高いので、行政の公募に対して、我々がお応えできそうな場所と条件であると判断した際に応募していますね。
委託事業者の選定は、いわゆるプロポーザル方式です。
職員配置など行政からの指定条件に対して、応募事業者が事業計画を作成して提出し、どのような保育の質やサービスを運営できるかを提案します。
行政はこの提案内容と、財務体質や会社の信用を総合的に判断し、選定した上で、議会で議決されて内定します。
予め行政が運営している施設を引き継ぐケースが多いのですが、単に運営事業者のやり方で運営をするわけではなく、従来のやり方や地域ニーズを踏まえながら、運営事業者の保育の良さやノウハウを活かしていく、という進め方ですね。
公設民営の保育園で働く保育士は、何が大変?
― 保育士が公設民営の保育園に務めることになった場合、どのようなことが大変でしょうか。
移管する時の、保護者、地域対応、あるいは既存保育士からの業務引き継ぎと言った“各方面への対応”だと思います。
保護者対応
保護者の中には、「公立に入園したのに、なぜ民間に変わるの?」と、行政に対する不満を持つ方もいらっしゃいます。直接顔を合わせる園長や担任の保育士は、保護者の皆さまの気持ちや意見をまずは受け止めるところから始まります。
地域と信頼関係
新しい事業者が入ることで地域の団体などはその関係構築が新たに必要となります。
こちらは「良好な関係構築を」と意気込んでいても、地域の方にご理解いただくのは簡単ではありません。運営者が変わることに不安になる方々もいると思います。地域との連携が更に「よくなった」と言っていただけるように努力が必要です。
業務引継ぎ
移管の際には「引継ぎ」として共同保育の期間があるのですが、その内容や質については体系化されていないので、保育士たちの力量や工夫が必要とされます。
既存職員との人間関係
公立と民間は、人間関係のヒエラルキーが大きく違います。
公立はピラミッド型のヒエラルキーが強い組織。序列や人間関係の上下もはっきりしています。一方、当社を含む民間企業の多くは、職級ごとに仕事の役割はあるものの、人間関係は役職・仕事の立場に引きずられないフラットな社風です。このような背景から、お互いの言動に対する受け止め方にズレが生じることがあります。
お互いの違いを理解した上で一緒に時間を過ごすことで、ズレを小さくすることができると思います。
異なる保育理念のすり合わせ
運営事業者によって、保育理念も変わります。民間企業の保育理念をそのまま導入するケースもありますが、保育をいきなりガラッと変えるわけにはいかないので、従来の公立保育園の方針は踏襲します。 その上で、保護者の意見を聞きながら運営事業者が目指す保育を提示していくのですが、一定期間をかけて慣らしながら、変えていく必要があります。
保育理念のすり合わせだけでなく、保護者や地域との連携においても、当事者である現場の園長や保育士にとっては大切な仕事ですが、当社の場合はSV職が橋渡しの中心となって取り組んでいます。
時間はかかりますが、運営に安心感を持っていただけたところに関しては、当社らしい保育が実現しつつあります。
◆取材協力
家庭的な空間の中で、子どもたちの生きていく力をはぐくみ、保護者・地域の皆さまと子育ての楽しさを共に分かち合い、生き生きと輝いていける「にじいろ保育園」を首都圏で53園運営。にじいろ保育園は、子どもの成長を支えるために自身が成長を続けよう、という意欲をもった保育士さんを求めています。
挑戦する気持ちを持つ方には会社も全力で支えますので、お気軽にお問い合わせください。
※施設数等の情報は、2015年8月現在のものとなります。
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